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艦首の甲板で乗組員が整列し、艦名を告げる声が響いた。中国の新型国産空母「福建」が2025年11月5日、海南省三亜で就役したと伝えられた。新華社が7日に報じ、中国海軍は3隻体制に移った。電磁式カタパルトの実用化で艦載機運用の幅が広がり、常時運用に現実味が増す。建造から試験、就役に至る動線は、海上でのプレゼンスを更新する一歩でもある。
三亜で整った新体制、海の現場が動いた
就役の舞台となったのは南の軍港だ。沿岸の航行区画では前後して制限が敷かれたとの報道があり、周辺の船舶は静かに距離を取った。大きな行事の気配は外側の海にまで及び、港外の作業船は計画を繰り下げて対応したとされる。細部は公表が限られるが、現地が緊張と平常のあわいに置かれていた様子が伝わる。
3隻体制の内訳は、中国初の空母として就役した「遼寧」、初の国産「山東」、そして「福建」だ。前2隻が訓練と運用の基盤を整えたうえで、最後発が飛行甲板の作法を塗り替える。耐用年数や整備周期の違いを回しながら、いずれかが海上に出続ける運用が視野に入る。整備ドックの灯り、補給艦の動き、搭載機の整備リズムまで、艦隊全体の呼吸が変わる。
防衛当局は秋口の時点で「その日はそう遠くない」と含みを持たせていた。段取りとしては、海上試験で確認した航海・発着艦の各手順を、部隊運用の体系へ接続する局面にあたる。装備移交、乗員の習熟、艦隊内の役割付けが一列に並ぶとき、紙の上の編成は具体の任務に近づく。就役の報は、その線が実務に結びついた合図でもある。
電磁式カタパルトが変える飛行甲板のリズム
「福建」の大きな特徴は、電磁式カタパルトを備えたことだ。従来の方式に比べて出力制御が柔らかく、軽量機から重量級まで最適な加速を与えやすい。発艦の衝撃が和らぐことで機体負荷を抑え、搭載品の選択肢も広がる。甲板の片側でアレスティング・ギアが着艦を受け止め、反対側で次の射出を準備する循環が滑らかになれば、飛行甲板のリズム自体が変わる。
秋には、電磁式カタパルトを用いた発艦と着艦の訓練成功が公に伝えられていた。対象はJ-15T、J-35、KJ-600の3機種で、艦上戦闘機と早期警戒機の双方が循環に入った形だ。とりわけ固定翼の早期警戒機は、飛行甲板に「目」と通信の節をもたらす。データの結節点が空に上がると、護衛艦や補給艦の役割も再編され、編隊の輪郭が変わる。
運用面では、射出回数の積み上げと整備性の検証が肝になる。新方式は理論値だけでなく、甲板の熱、塩害、湿度といった現場の条件にさらされる。射出軌条の保守周期、作動不良時のバックアップ手順、電源系の冗長化など、甲板要員の所作に新しい手順が加わる。就役はゴールではなく、飛行甲板の時間割を安定させる始まりだ。
設計の選択と建造の足取り
動力は通常型とされ、満載約8万t級の船体に3基の電磁式カタパルトを載せる。原子力を用いずに飛行運用を支える設計は、電源の平準化や補助動力の在り方に工夫を促す。甲板面積やエレベーター配置、格納庫の導線まで、飛行群の回転を途切れさせない細部が積み重なる。数字の大きさだけでは測れない、運用設計の地味な最適化が効いてくる。
建造は上海で進み、進水から海上試験を経て就役に至った。沿岸域での旋回や停止、電磁式カタパルトの段階試験など、積み木のように試験項目を積み上げる過程が続いたとみられる。甲板クルーは手旗、無線、表示灯を組み合わせ、ミスの余地を減らす算段を磨いたはずだ。艦と人が同時に新しい手順を身につけること自体が、国家的な技術遺産になっていく。
艦隊全体を見ると、既存の2隻が培った運用ノウハウに新顔の手順が重なり、訓練項目の再配分が進む。搭載機の数や整備枠は限られるため、訓練と哨戒の配合を季節や海況に合わせて調整することになる。就役の一報は、海の上の時間管理が次の段階に入ったことを示す静かな鐘の音のようだ。港に戻る艦の舷側に、淡い整備灯が連なる光景が重なる。
