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曳船に引かれた灰色の船体がゆっくり離岸した。2025年11月14日、中国の新型強襲揚陸艦「四川」が上海から初の試験航行に出た。電力や推進など基幹システムの信頼性を確かめる段階に入り、11月5日に空母「福建」が就役した直後の動きとして、海洋戦力の節目が連続している。
相次ぐ大型艦、何が変わるか
同日9時ごろ、沪東中華造船の岸壁を離れた「四川」は、所定海域で初回の航行試験を行う。今回は動力と電力の系統を中心に信頼性と安定性を検証する計画だ。艦は2024年12月に進水して以降、係留試験や装備の調整を積み重ね、出海の技術条件を整えてきた。強襲揚陸艦(兵員や車両を洋上から上陸させる艦)としての基本性能を確かめる初段である。
「四川」の満載排水量は4万トン超。全通飛行甲板を持ち、固定翼機やヘリ、水陸両用装備の搭載が見込まれる。目を引くのは電磁式カタパルト(リニアモーターの原理で艦載機を射出する装置)で、同じ方式の空母「福建」と連携すれば、航空運用の選択肢が広がる。揚陸と航空の接点に新たな運用余地が生まれる構図だ。
福建の就役と連動する意味
「福建」は11月5日に海南の基地で就役し、式典には最高指導部が臨んだ。電磁式カタパルトを採用する同艦は、従来の跳躍台方式より重い機体や多様な支援機の運用が想定される。長期の試験航行を経ての就役で、今後も段階的に能力を高める。新旧の運用法が重なり合い、艦隊全体の航空運用は厚みを増していく。
一方の「四川」は上陸作戦を担う艦だが、カタパルトを用いた固定翼無人機の離発着が現実味を帯びる。偵察や電子戦、目標指示といった任務が強化されれば、空母打撃群と揚陸部隊の間をつなぐ“空の橋”を担い得る。ただし搭載機や運用体制の詳細は公表されていない。現時点で確認されるのは、試験計画が予定どおり進むという事実である。
静かに変わる海のバランス
大型艦の節目が9日間で続いたことは、造船能力と配備のテンポが保たれていることを示す。試験航行の段階とはいえ、東・南シナ海や台湾周辺でのプレゼンスはじわりと増す。日本にとっても周辺海域の警戒監視や島嶼防衛の前提が、少しずつ更新されていく。装備が整うほど、日常の警戒と訓練の重みは増す。
同時に、就役と戦力化の間には距離がある。甲板運用の成熟、艦隊としての連接、補給や修理の体制など、海上で積み上げる作業は多い。造船台のスピードを海上運用の熟度が追いかける過程にあり、強度の高い訓練を重ねてこそ戦力は定着する。航跡が定まるのは、もう少し先になる。
岸壁に残る余熱だけが、次の出港が遠くないことを静かに示していた。