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福建省泉州市の警察が動いた。2025年11月13日、台湾のインフルエンサー温子渝(ウェン・ツーユー)氏と陳柏源(チェン・バイユエン)氏の情報提供を募る指名手配を公表し、通報者には金銭の報奨を設けた。投稿で中国批判や台湾独立をあおったとされる2人をめぐり、中国側は厳罰姿勢を示す。一方の台湾政府は「越境抑圧」と反発し、国際ルールの観点から実効性に疑義を呈した。出来事は画面越しの言論と国家の境界が交わる場所で、静かな緊張を帯びている。
泉州公安が2人を指名手配、情報提供に報奨金を設定
泉州市公安局は2人が「国家分裂の扇動」に当たる行為を繰り返したとし、犯罪につながる手がかりの提供を広く呼びかけた。金額は5万〜25万元で、提供内容の有効性に応じて支払うという。対象は台湾人を含むと明記され、当局は「台湾独立」勢力の危険性を強調した。反分裂国家法(中国の領土一体を損なう行為の禁止を定めた法律)の運用をにらんだ措置で、ネット上の発信者にまで網を広げた格好だ。
中国国務院台湾事務弁公室の陳斌華(チェン・ビンフア)報道官は、2人が「抗中保台」や「倚美謀独」などの内容を発信し、社会に悪影響を与えたと主張した。同報道官は処分の厳格化に言及し、統一と復興という国家目標に結びつけて正当性を強調した。今回の通告は、当局が設けた通報窓口や監視の枠組みと連動し、個別事案の摘発だけでなく、抑止のシグナルを発する役割も帯びる。
指名手配されたのは、動画配信などで知られる温子渝氏(通称「八炯」)と、ラッパーの陳柏源氏(通称「閩南狼」)だ。2人は中国の政策を貶めたとされ、台湾で暮らす中国本土出身者への差別を助長したとも指摘された。地域警察が名指しで社会的影響を非難するのは異例ではないが、報奨金制度の併用は、越境的な情報網を活用する狙いがにじむ。越境の線引きが曖昧になりやすいオンライン空間で、法の及ぶ範囲を拡張しようとする意思が透ける。
台湾政府は強く反発、越境抑圧と法の線引きを示す
台湾行政院の李慧芝(ミシェル・リー)報道官は、今回の通告を「台湾の自由と人権への直接の脅威」と位置づけ、「民主国家がこの種の行為を侮辱として受け入れることはない」と述べた。政府として全ての台湾人の安全を守る意思と能力を示し、他国と連携して中国の越境的な圧力に対処する姿勢を示した。政治的言論を刑事の枠で捉える手法に対し、台湾側は国家間の法域の差を盾に慎重な距離を保つ。
台湾の大陸委員会(対中政策を所管する機関)の法務担当は、引き渡しの前提となる「二重犯罪」原則(双方で犯罪となる行為に限り引き渡し可能)を踏まえ、多くの国が政治犯罪の疑いでの引き渡しに応じない傾向を説明した。これにより、民主主義国家で台湾人が中国へ移送されるリスクは限定的だとの見方を示し、域外での逮捕要請の実効性に疑問符をつけた。台湾側は同時に、住民が自発的に当局へ協力した場合の国内での刑事責任にも言及し、関与抑止を図る。
台湾の研究者からは「中国には台湾に対する法的・実効的管轄権がない」とする指摘が出ている。指名手配は市民に恐怖を与える心理・法的戦術に重心があるとの分析だ。中国側は反分裂国家法の解釈を前面に出し、台湾側は国際法の運用と民主的な権利保障を土台に応じる。両者の視点は交わらないが、越境するプラットフォーム上の発信をめぐる攻防は続く。画面に流れる言葉は軽く見えても、その背後で制度は重さを増している。