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週末の中国各地で、家庭教会の礼拝所に緊張が走った。政府の認可を受けていない「シオン教会」の牧師らが一斉に身柄を拘束され、創設者の金明日牧師も広西チワン族自治区北海市の自宅で連行された。現時点で確認される範囲では約20人が拘留中とみられ、オンライン布教を厳しく縛る新たな規範の施行直後というタイミングが重なる。宗教統制の地殻変動が、静かな週末の風景を塗り替えた格好である。
週末に何が起きたのか
2025年10月10日夕方、金明日牧師が北海市の自宅で身柄を拘束された。家族と教会の関係者が受け取った拘留通知には、容疑として「情報ネットワークの違法使用」が記され、北海市の拘置施設に収容されたとされる。この容疑は状況次第で最長7年の禁錮につながりうるとされ、教会側は健康面や弁護人接見の可否を強く案じている。拘束の連絡が相次いだのは、金牧師の身柄拘束とほぼ同時刻のことである。
同じ週末、各地の牧師や教会関係者が次々と当局に連行され、最初に把握された人数はおよそ30人に上った。その後に数人が解放された一方、牧師と教会指導者を中心に約20人の拘留が続いていると教会スポークスマンは述べる。現時点で当局からの公式説明は確認されておらず、北海市の警察や関係当局の問い合わせにも回答は得られていない状況が続く。
教会側は「今年の宗教弾圧の新たな波だ」と受け止める。ここ数カ月で礼拝の場に警官が現れる頻度が増し、少なくとも150人規模で信徒の聞き取りが行われたという。日曜の集いに走る小さなざわめきと、閉ざされた扉の向こうで続く取り調べ――そのコントラストが、信仰の場に落ちる影の濃さを物語ると映る。
強まる統制とオンライン規制の連動
今回の一斉拘束は、インターネット上の宗教活動を厳格に縛る制度の網が細る中で起きた。中国では2022年から、宗教情報の配信や転載、プラットフォーム運営などに許可制を導入し、許可を受けた宗教団体や寺院・教会に限り、所定の環境での講解や宗教教育を認める枠組みが走り始めた。無許可でのオンライン布教や儀式の配信、未成年への誘導などは明確に禁じられている。
さらに2025年9月7日には、宗教教職者のネット行動を詳細に規定する新たな規範が通知された。教職者が講解や教育を行えるのは、許可を得た宗教団体などが自ら構築したサイトやアプリなどに限るとあらためて線引きされ、短動画や配信、オンライン会議を含む広い形態の「ネット伝道」が禁圧の対象に置かれた。境外勢力との「勾連」や商業的ライブ配信の禁止も列挙され、監督当局は是正命令やアカウント閉鎖に踏み込む手続を整えたといえる。
金牧師に適用された「情報ネットワークの違法使用」という刑事容疑は、こうした行政規制の強化と相互に呼応するかのように使われてきた経緯がある。現時点で当局の立件詳細は示されていないが、規範の施行から1カ月余での強制措置という時間軸は、オンライン空間に広がる信仰活動を法と行政の両輪で抑え込む姿勢が一段と固まったことを示唆する。制度と運用が同時に締まる感覚が、現場の肌温度を変えていると映る。
教会共同体への影響と見通し
シオン教会は、政府非公認の大規模な家庭教会として知られてきた。都市部を中心に信徒は広く散在し、週末の集いは地域の結び目でもあった。今回の拘束で説教や集会の運営は揺らぎ、礼拝の引き継ぎやオンライン対応の見直しが迫られているとみられる。教会側は信徒の安全確保と情報共有を優先しつつ、法的支援の手立てを探っている。
一方で中国のキリスト教界全体を見渡すと、政府に登録された信徒が数千万規模に上るとされ、多くはプロテスタント系だと伝えられてきた。他方、共産党の管轄外で活動する信徒も数千万人規模と推計され、宗教空間は多層に広がる。今回の動きは、そのうち特にオンラインで育ったネットワークの脆弱さを突く形で表面化したとみられる。
拘束者の所在や処遇、弁護人との面会可否など、基礎情報の透明性は依然として低い。現時点で確認されているのは、およそ30人規模の拘束が発生し、数人が解放された後も約20人が拘留されているという事実関係である。制度の締め付けと現場の運用が重なる中、信徒の小さな集いがどこまで守られるのか。週末の礼拝に戻る静けさは、しばらく先になるのかもしれない。
