本サイトの記事や画像はAIが公的資料や報道を整理し制作したものです。[続きを表示]ただし誤りや不確定な情報が含まれることがありますので、参考の一助としてご覧いただき、実際の判断は公的資料や他の報道を直接ご確認ください。[私たちの取り組み]
議場に木づちの音が響いた。ブラジル北部ベレンで開かれていた国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議（COP30）は2025年11月22日、195の参加国による新たな合意文書「ベレン・パッケージ」を採択した。ただし、最大の焦点だった化石燃料の段階的廃止は直接の文言として盛り込まれず、各国がぎりぎりの妥協でたどり着いた合意だった。
化石燃料を巡る攻防と、守りたかった別の成果
交渉は約2週間続き、多くの国が石油や石炭、ガスからの脱却戦略が示されなければ交渉から離脱する構えさえ見せていた。議長を務めたブラジルのアンドレ・コヘーア・ド・ラーゴ氏は、森林保全と化石燃料からの移行に関する2本の「ロードマップ」構想を提示したが、サウジアラビアなど産油国や石炭生産国のインドの反対は根強く、最終文書では過去の合意への言及にとどまった。
それでも各国が合意に踏み切ったのは、別の重要な前進を失いたくなかったからだ。採択されたベレン・パッケージには、先進国による途上国への適応資金を2035年までに3倍へ引き上げる約束や、公正な移行を支える新たな仕組み、気候変動への適応状況を測る59の指標の導入などが含まれる。欧州連合の気候担当委員は「もっと多くを望んでいた」と率直に語りつつ、プロセスを崩壊させないために薄められた合意を受け入れたと明かした。
揺らぐ信頼の中で試された多国間主義
今回のCOP30では、国際政治の緊張も交渉の影を落とした。主要排出国である米国はドナルド・トランプ大統領が協議への参加を避けたため欠席し、最終日の本会議では適応指標の扱いを巡り南米諸国などが議長の進行に異議を唱えた。それでも各国が最終的に決定を受け入れた背景には、ここで枠組みが壊れれば、気候資金や適応策を前に進めるための「グローバル・ムチロン」決定や実施加速の新たな仕組みまで失いかねないという切迫感があった。
議長国ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ大統領は、G20首脳会議のため滞在していた南アフリカから「国際社会は続けるか諦めるかの選択に直面した。われわれは前者を選んだ」と述べ、「多国間主義が勝利した」と強調した。新興国グループを代表したインドは合意を「意義あるもの」と評価し、気候変動に最も脆弱な小島嶼国連合も「不完全だが必要な進展」と位置づけた。分断や不信が残るなかでも、ベレンで確認されたのは、完璧ではない場であっても各国が集うことでしか動かせない仕組みがまだ機能しているという、ささやかな事実だった。
会場の灯りが落ちたあと、残ったのは紙の上の約束である。その行方を決めるのは、これからの10年に各国が実際に進める行動だけだ。
