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国会の党首討論でマイクが切り替わる音が響き、野田佳彦代表が前に身を乗り出した。2025年11月26日、立憲民主党の代表は、かつて自らも推進役となった企業・団体献金の原則禁止法案を「取り下げる方向だ」と明かした。自民党の裏金問題を受けて生まれた野党共同の改革案が、連立の組み替えとともに静かに役割を終えつつある。
なぜ共同提出の禁止法案を引っ込めるのか
野田氏が取り下げに言及したのは、与野党党首が対峙した衆院での討論の場だった。3月に野党5党派が共同提出した禁止法案を巡り、同氏は「いったん取り下げ、公明党と国民民主党がまとめた案を基本的に支持する」との考えを示したと報じられている。献金の受け手を政党本部や都道府県連に限るという同案を軸に、与党側との妥協点を探る構図へと舵を切った形だ。
同じ26日、日本維新の会の藤田文武共同代表も記者会見で、禁止法案の取り下げが妥当だと強調した。維新は10月に自民党との連立合意書に署名し、現在は与党側の一角を占める。藤田氏は、野党時代に出した法案をそのまま審議に付すのは現実的でなく、自民党と協議して新たな法案を出すのが「正攻法だ」と説明した。かつて野党結集の象徴だった法案は、今や与党内調整の出発点に変わりつつある。
禁止法案が描いていた企業・団体献金の終着点
この法案が目指していたのは、企業や労働組合からの資金が政治を左右する構図そのものの解消だった。立憲民主党の資料によれば、会社や組合などによる寄付や政治資金パーティーの購入を原則すべて禁じ、違反には刑事罰を科す内容だったとされる。一方で、政党やその政治資金団体を除く政治団体からの献金については、年間総額6000万円を上限に認めるなど、活動資金の確保にも一定の配慮を残していた。
1990年代の政治改革で、企業・団体が個々の議員や資金管理団体に献金することは禁止され、代わりに政党助成金制度が導入された。しかし政党や支部への献金は存続し、「抜け道」との批判も長く続いてきた。先の衆院選で与党は単独過半数を失い、野党が結束すれば制度を変え得る力学が生まれたことから、3月の禁止法案は、30年越しの課題に区切りを付ける試みとして位置づけられていた。
連立合意と自民案が映すこれからの論点
一方で、自民党と維新が2025年10月20日に結んだ連立合意には、企業・団体献金をおおむね2年以内に廃止するとの文言が盛り込まれた。ただ同時に、自民党は献金そのものを直ちに禁じるのではなく、受け皿を政党が指定する支部に限定し、政治資金収支報告書のオンライン提出義務化や、企業名を公表する基準額の大幅な引き下げなど「公開強化」を柱とする法案も検討している。公明・国民民主の案と合わせ、複数の路線が交錯している。
企業・団体献金をめぐる議論は、単なる賛否の対立から、どこまでを禁止し、どこからを透明性強化で担保するのかという線引きの問題へと移りつつある。完全な禁止が実現すれば、企業名と献金額を追う必要はなくなるが、政党や政治団体の財政基盤は大きく組み替えられる。公開強化型の案が採用されれば、市民は誰がどの政党を支えているかを以前より詳しく知る一方で、献金という仕組み自体は残る。26日の「取り下げ」は、その分岐点に立つ政治の現在地を映しているように見える。
拍手もやじもやんだ本会議場で、野田氏の短い言葉が淡々と記録に刻まれ、法案がどのような姿に変わろうとも、金と政治の距離をどう測るかという問いだけが静かに残っている。
