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中国のAI新興企業DeepSeekが、米国の対中禁輸対象となっているNVIDIAの最先端AI半導体「Blackwell」を使って次期モデルを開発していると、米メディアの報道が10日に相次いだ。許可された第三国向けに出荷されたサーバーからチップを抜き出し、中国へ部品として運び入れたとされる手口は、輸出規制の網の隙間を突くものだ。AI覇権を巡る米中対立のなかで、禁輸チップをどう封じ、企業の開発競争と折り合いをつけるのかが改めて問われている。
禁輸チップで次期モデル開発か、中国DeepSeekの切迫感
報道によれば、DeepSeekは数千個規模のBlackwellを確保し、次の大型AIモデルの学習に投入しているとされる。BlackwellはNVIDIAが開発した最新世代GPUで、中国本土への正規販売が禁じられている。にもかかわらず、先端チップに依存せざるを得ない中国企業が、法のグレーゾーンや違法な経路を探る構図が浮かぶ。
チップ入手の経路として報じられているのは、まず輸出が許可された第三国のデータセンター向けにサーバーとして出荷し、その後サーバーを分解し、基板やモジュール単位にして中国へ再輸入する方法だ。流通網が複雑で、製品が世界中を行き交うほど、途中で用途や最終顧客を偽装しやすくなるという、サプライチェーンの弱点が突かれている。
DeepSeekは2025年初めに、低コストでありながら米国勢に匹敵する性能をうたうモデルを公開し、一躍存在感を高めた。だが中国国内で開発が進む国産AIチップは、依然として大規模モデルの学習に必要な性能やソフトウェア基盤が不足しているとの指摘が多い。自前の半導体が追いつかないなかで、禁輸チップに手を伸ばす誘惑は強まり、輸出規制が企業の「抜け道探し」を促す皮肉な一面も見えてくる。
追いかける規制と監視技術、第三国も巻き込む攻防
一方のNVIDIAは、報道内容を全面的に認めているわけではない。同社は、DeepSeekがBlackwellを使用していると示す具体的な情報は得ていないと説明し、不正輸出の疑いがあればパートナーに対応を求める姿勢だ。そのうえで、違法な再輸出や密輸を抑える手段として、GPUと自社サーバー間の通信遅延を解析し、おおよその設置場所を推定する位置検証ソフトを開発し、Blackwell世代から導入するとしている。
米政府は、A100やH100といった高性能GPUを段階的に禁輸しつつ、一部のチップは条件付きで中国販売を容認するなど、経済と安全保障の綱引きを続けてきた。しかし、実際のチップ流通では、シンガポールやマレーシア、アラブ首長国連邦など第三国を経由した再輸出がたびたび問題視されている。米当局は組織的な密輸ネットワークの摘発を進める一方で、ルートを完全にふさぎきれていないのが現状だ。
第三国側も板挟みになっている。シンガポール貿易産業省は、DeepSeekが同国経由で規制対象チップを入手したとの疑惑について、現時点で違反の証拠は見つかっていないとしつつ、米当局と協調して監視を強めると表明した。各国が法令順守を掲げ、NVIDIAも追跡技術を整えつつあるが、AI需要と地政学的な緊張が交錯するなかで、規制だけで先端チップの流れを制御できるのかという問いはなお残る。
参考・出典
- Nvidia builds location verification tech that could help fight chip smuggling
- NVIDIA (NVDA) Dismisses Allegations of Smuggled Blackwell Chips in China
- DeepSeek-Nvidia chips: Singapore says it expects companies to comply with its laws
- Press Statement on whether DeepSeek gained access to US export-controlled chips through intermediaries in Singapore
