若手俳優2名、共同で乾燥大麻所持の疑いで逮捕

9月24日、静かな午後の東京で一本の速報が流れた。若手俳優の遠藤健慎容疑者が、清水尋也被告と共同で乾燥大麻を所持した疑いで逮捕されたという。人気作に名を連ねたふたりの名が、突然「刑事事件」という文脈で結びつく。事件はどこまで広がり、私たちに何を問いかけているのだろうか。

逮捕の一報、その場にいたのは誰か

逮捕の軸足は、杉並区の静かな住宅街にある清水被告の自宅である。現時点で確認されている範囲では、9月1日ごろに室内で乾燥大麻が見つかり、量は約0.4グラムとされる。警視庁薬物銃器対策課は、所持の実態が単独ではなく「共同」であった可能性を重視して捜査を進め、遠藤容疑者の身柄を取った。遠藤容疑者は「大麻のようなものは見たが、自分のものではない」と否認している。起点の部屋に居合わせた人々の関係性は複雑で、仕事場でつながった俳優同士の距離感が、私的な空間にまで延びていた情景が浮かぶ。捜査は入手経路や費用負担の流れまで射程に入れており、単なる「所持」の枠を超えて、誰がどこで意志決定をしたのかという点に踏み込もうとしている。手元の痕跡、会話の断片、スマートフォンに残るやり取り。そうした小さなピースが、やがて同じ絵を描き出すのか、それとも別の輪郭を示すのかが焦点である。

長く静かな内偵、玄関の出入りを数える

部屋の灯りが消えたあと、廊下に靴音だけが残る時間がある。捜査はそうした「間」を拾い続けてきた。確認されている範囲では、警視庁は約8カ月前から実態把握に動き、遠藤容疑者が自宅に少なくとも5回以上出入りする様子を積み上げてきたという。任意で話を聞く段階から、刑事手続きの線上へと踏み込むタイミングを測り、室内のどこに何が置かれ、誰の手がそれに触れたのかを、動線と時間で切り取っていく。乾燥大麻という物証は小さい。だが、小さいがゆえに「誰のものか」をめぐる争点は大きい。共用のテーブルに置かれていたのか、個別の私物と紐づく位置だったのか、どの会話のあとに現れたのか。家というプライベートな場が、一転して検証の舞台へと変わるとき、そこでの関係は「同居」「友人」「客」といった言葉のラベルを越えて、具体的な行為の連なりとして問われる。静かに続いた内偵の時間は、その連なりを実証へと変えるための準備だったはずだ。

食い違う言葉、浮かぶ入手と動機の線

供述は二つの線を描く。ひとつは否認の線で、遠藤容疑者は「見たが自分のものではない」「使用もしていない」と語る。もうひとつは関与を認める線で、同席したとされる知人男性は、どの売人から入手するかを相談し、代金の負担についても清水被告側の関与を示す趣旨の供述をしていると伝えられる。さらに一部報道によれば、購入量は2グラムで、当日その場にいた4人で吸う前提だったという説明もある。ただし、誰がどの瞬間に「所持」に当たる占有をしたのか、刑事責任の線引きは容易ではない。室内の光景を断片的に思い出す証言は、時に自分に有利な角度を帯びる。捜査は、押収品の鑑定、指紋やDNAの付着状況、通信履歴の整合性といった冷たい事実を重ね、言葉の温度差を埋めようとしている。こうした過程は、関係者それぞれの将来を決める岐路になる一方で、周囲の人間関係や仕事の現場にも余波を広げる。果たしてどこまでが個の責任で、どこからが関係の連帯なのか。

止まらぬ波紋、スクリーンの外で問われるもの

事件は仕事の現場にも影を落とす。撮影済み作品の対応、放送や公開の判断、出演契約の条項の運用。制作現場は一つの歯車が止まるだけで全体の歩みが鈍る。遠藤容疑者はNHK大河ドラマ「青天を衝け」などに出演歴があり、清水被告も近年の話題作に名を連ねてきた。スクリーンや画面の向こうで築いてきた印象が、現実のニュースに引き寄せられるとき、受け手は作品と俳優をどう切り分けるべきかに直面する。違法薬物に対する社会の厳しさは、ここ数年で確かな共通認識になった。一方で、依存や再犯防止といった医療・福祉の領域が、刑事手続きとどう手を取り合うかも課題として浮かび続ける。私たちは、作品に刻まれた時間と、俳優が背負う現実の時間を、どのように併走させて受け止めるのか。事件の糸口が見え始めた今こそ、視聴の習慣や制作の慣行を含め、日常の側から考える必要がある。