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岡山大学は2025年12月18日、がん細胞だけで増える性質を持つ「腫瘍溶解ウイルス」を使った食道がん治療薬について、大学発ベンチャーのオンコリスバイオファーマが厚生労働省へ製造販売承認を申請したと発表した。承認されれば、食道がんを対象にしたウイルス治療薬としては初の実用化になる可能性がある。焦点は、治療の選択肢が限られる患者に、どれだけ「次の手」を残せるかだ。
「がんの中でだけ増える」ウイルス薬が狙う領域
申請した薬は「テロメライシン」(OBP-301、一般名Suratadenoturev)で、岡山大で開発が進められてきた。ひとことで言うと、正常な細胞では増えにくく、がん細胞の中で増殖して細胞死を誘導する“狙い撃ち型”の治療だ。外科手術や抗がん剤などの標準治療が難しい症例を念頭に、体への負担を抑えつつ局所をたたく発想に立つ。
もう1つの特徴は、放射線治療と組み合わせる設計にある。岡山大は、テロメライシンが放射線後のDNA修復を妨げ、併用で治療効果が強まる可能性を示してきたとしている。仕組みの説明だけを聞くと難しいが、患者側の体感に置き換えれば「放射線の効き目を、局所で押し上げる補助役」を足すイメージに近い。
承認審査の先に残る課題は「使える形」で届くか
開発の歩みは長い。岡山大によれば、米国では2006年からFDAの承認のもと第I相試験を始め、日本でも段階的に臨床試験を重ねた。国内では食道がん患者が多い日本の17施設で第II相試験を行い、高い臨床的完全寛解率が得られたとしている。一方で、申請はゴールではない。審査を経て、適応や併用条件、運用の細部が「現場で扱える仕様」に落ちるかが次の山場になる。
食道がんは、治療そのものが生活に直結する。食べる、飲み込む、話すといった基本動作に影響しやすく、治療の選択肢が限られた段階では「延命」だけでなく「日々をどう保つか」が切実になる。2019年には厚労省の先駆け審査指定制度の対象に選ばれた経緯もあり、審査のスピードや議論の深さが注目される。実用化が見えたとき、課題は薬そのものだけでなく、製造や供給、費用負担まで含めた“届き方”へ移っていく。
