ローマ教皇がゼレンスキー氏と会談　「欧州抜きの和平は非現実的」強調

ローマ教皇レオ14世は9日、ローマ近郊カステルガンドルフォでウクライナのゼレンスキー大統領と会談し、ウクライナ戦争の終結には欧州が中心的な役割を担うべきだと強調した。会談後、教皇は記者団に対し、欧州大陸を外したどんな和平案も現実的ではないと述べ、公正で永続的な和平に向け欧州各国が結束して行動するよう呼びかけた。

欧州抜きの和平は「現実的でない」

教皇は、ロシアの侵攻が続くウクライナで苦しむ市民の現状を踏まえ、戦争が欧州の大地で起きている以上、その将来を決める場から欧州を排除すべきではないと指摘した。欧州連合(EU)や周辺諸国は軍事支援や避難民受け入れを通じてすでに大きな負担を負っており、その声を十分に反映しない枠組みでは合意が長続きしないとの懸念がにじむ。

一方で、ウクライナ側は欧州各国と協議しながら、自国の領土一体性を守りつつ停戦への道筋を探っている。ゼレンスキー氏は、米国や欧州のパートナーと複数の文書案を詰めていると説明しており、教皇の発言は、こうした外交努力の重心を欧州に据え直すべきだというメッセージとして受け取ることができる。

バチカンの対話路線と米欧のずれ

今年5月に就任したレオ14世は、前任フランシスコの路線を引き継ぎ、「壁ではなく橋を築こう」と対話の重要性を訴えてきた。バチカンは軍事同盟に属さない立場を生かし、捕虜交換やロシアに連れ去られたウクライナの子どもの帰還など、人道的な仲介に力を入れているとReutersやAP通信は報じている。今回の発言には、こうした活動を出発点に、武力の均衡ではなく外交と協調を軸にした解決を模索してほしいという思いが透ける。

教皇はそのうえで、欧州が自ら責任を引き受ける形で和平の枠組みを設計すべきだと示唆しているように見える。一方、トランプ政権の対欧州政策には同盟関係を弱めかねない姿勢も指摘される中、「欧州抜きの和平は現実的でない」との言葉は、米国主導案とのずれを直視し、誰がどこまで戦争終結の重荷を担うのかを静かに問いかけている。

参考・出典

• Pope urges 'continuation of dialogue' after meeting Ukraine's Zelenskiy
• Pope criticizes US bid to 'break apart' US-Europe alliance, insists on Europe role in Ukraine peace
• Italy could act as mediator between Russia and Ukraine, says Pope Leo
• 教皇「忘れてはならない、平和は可能である」 – バチカン・ニュース
• 新ローマ教皇レオ14世　平和への思い語る「対話を通じて橋を築こう」