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連邦政府の一時閉鎖が長引くなか、ホワイトハウスは10日、政府全体で大規模な人員削減（RIF）を始めたと明らかにした。OMBのラッセル・ボート局長がSNSで「RIFが始まった」と投稿し、報道官も「大規模だ」と認めた。裁判所提出文書では財務省や厚生省などで解雇通知が出ている。労働組合は違法だとして差し止めを求めており、前例の少ない判断が行政現場と政治の駆け引きを直撃していると映る。
始まった「解雇通知」の波
10日の発表は静かな官庁街に緊張を走らせた。ホワイトハウスは詳細を伏せる一方で、ボート局長がSNSで開始を宣言し、OMB報道官も規模の大きさを示唆した。トランプ大統領は同日、議会での妥協が進まない責任は野党にあると強く批判し、「多くの職員に通知が届いた」と述べた。数がなお流動的であることをにおわせつつ、政治的圧力を高める狙いが浮かぶ。
司法省が裁判所に提出した書面によれば、各省庁で具体的な通知数が示されている。財務省は約1,446人、厚生省は約1,100〜1,200人、教育省は約466人、商務省は約315人、エネルギー省は約187人、住宅都市開発省は約442人、国土安全保障省は約176人とされた。環境保護庁では20〜30人に「将来のRIFの可能性」を伝える意向通知が出たとされ、対象の広がりがにわかに現実味を帯びている。
現場の内訳も見え始めた。国土安全保障省ではサイバーセキュリティ庁の人員が標的になるとの説明が出ており、選挙や重要インフラの防護を担う部門への影響が懸念される。内国歳入庁ではIT職の削減が進み、解雇通知に伴う分離日は12月9日とされる。一方、閉鎖時の原則である「全員への復職後の遡及賃金」について、OMBメモは保証を明確にせず、労組側の反発が強まっているとみられる。
法廷で問われる「閉鎖中のRIF」
労組は1日に連邦地裁へ提訴し、閉鎖中にRIFを進める法的権限はないと主張した。論点は二つに収れんする。第一に、閉鎖時の人員整理は歳出禁止法の枠外で許されないという点。第二に、解雇には原則60日前の通知が必要で、短縮は限定的だという手続き論である。審理は16日に予定され、緊急差し止めを巡る攻防が山場を迎える。政府側は省庁の裁量や既存制度の適用を強調し、法の解釈で対峙する構図だ。
司法省は10日に反対意見書を提出し、複数省庁の通知状況を列挙したうえで、労組側の主張は救済の場を誤ると反論した。さらに、今回の閉鎖と人員整理の扱いを巡っては、今夏の司法判断が広範な削減に道を開いたとの指摘もある。もっとも、現時点で確認されている範囲では下級審での審査も残り、結論は流動的だ。閉鎖という非常時に通常のRIF手続きをどこまで重ね合わせ得るのか、線引きが問われている。
現場の戸惑いとこれから
オフィスの灯りが落ちたままの廊下で、職員は端末に届く通知を待つほかない。住宅都市開発省の労組関係者は「手続きの抜け道だ」と批判し、環境保護庁の支援団体は専門職の流出に警鐘を鳴らす。内国歳入庁では老朽システムを抱えるIT部門の余力低下が指摘され、納税シーズンへの影響がささやかれる。個々の現場判断と本省の方針がねじれ、士気の低下が静かに広がっていると映る。
政治の時計は止まらない。大統領は「発表する数は多くなる、すべては野党のせいだ」と語り、攻勢を強めた。与野党はつなぎ予算を巡る交渉を続けるが、閉鎖の長期化で省庁の業務優先順位が塗り替えられつつある。遡及賃金を巡る解釈も対立しており、労組は「閉鎖を人減らしの口実にするな」と訴える。事態の帰趨は議会と法廷の二正面で決まり、行政の基盤に長い影を落としかねない局面が続いている。
