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薄曇りの国会内で、記者団が一斉に身を乗り出した。2025年10月15日、立憲民主、維新、国民の3党党首会談に臨んだ日本維新の会の藤田文武共同代表は、一部で報じられた「首相指名で自民・高市早苗総裁に投票」観測に距離を置き、与野党の多数派工作が加速する只中で「何のために組むのか」を軸に据え直した格好だ。臨時国会が21日に召集される見通しのなか、水面下の駆け引きは最終盤に入ったと映る。
交差する思惑、国会の空気
この日、3党の顔合わせは首相指名選挙に向けたカギを握る場となった。立憲は候補一本化に意欲を示し、国民は憲法・原発・安保などの整合性を条件に掲げた。衆院ベースで3党が結束すれば自民を上回る議席構成が見込まれ、政権の重心が一気に移る可能性がある。与野党の緊張が廊下の空気にもにじむ。
一方、自民は野党連携の分断を狙い、同日、与野党それぞれと個別の党首会談を重ねた。高市総裁は立憲の野田代表、国民の玉木代表、維新側とも順次向き合い、国会運営での協力を打診したとされる。21日の臨時国会召集が伝達されるなか、首相指名を同日実施する案も俎上に載り、カレンダーが交渉の圧力となっている構図が浮かぶ。
「飛ばし」否定と「大義」探し
維新の藤田氏は会談後、記者会見で一部報道に言及し、首相指名での自民支持観測を「飛ばし」と否定する趣旨を示した。各党との協議が同時並行で進む現状を踏まえ、連携の見取り図については「どこがどうまとまるかはやってみないと分からない」と語り、結論先行ではなくプロセス重視の姿勢をにじませたとみられる。
そのうえで、自民の高市総裁との党首会談にも臨み、「何の大義のためにやるのかが整わないと、ご一緒できない」との考えを示した。政策や統治の理念での接合点が見いだせるのかが最大の関門であり、単なる数合わせには与しないという距離感である。維新が掲げてきた統治機構改革や身を切る改革をどこまで相手にのませられるか、交渉の射程が問われている。
首相指名へ刻む時計
政府は15日、各院の議運理事会で臨時国会を10月21日に召集すると伝達した。首相指名の同日実施を含めた日程調整が続き、党首間の往来は一段と慌ただしい。3党が一本化にこぎつければ主導権は野党側に傾くが、参院情勢や政策差の溝は小さくない。合意形成の糸口が見つかるのか、結局は両院協議会に雪崩れ込むのか、複数のシナリオが併走している。
維新は党内合意のプロセスも並行させる見通しで、会談内容の共有や方針整理が急務となる。藤田氏が繰り返す「大義」の言葉は、単なるキャッチではない。誰のための権力移行なのか、何を実現するための多数派なのか。その答えを示せる陣営が、21日に向けた短い時間軸のなかで主導権を握る展開が濃く、永田町の時計は音を立てて進んでいる。
