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福岡県を含む複数の府県で続いた空き巣事件で、福岡県警が中国籍の男女3人を窃盗などの疑いで逮捕し、送検したと公表した。捜査では、住宅を狙った空き巣など56件への関与が確認され、被害総額は約2200万円にのぼるという。静かな住宅街でも「いつ狙われるか分からない」という不安が広がるなか、暮らしをどう守るかが問われている。
繰り返される空き巣が住宅街にもたらした不安
逮捕された3人は、昨年初めから今年3月ごろまでの約1年余り、福岡県を含む5府県で一般住宅を狙った空き巣などを繰り返した疑いが持たれている。県境をまたいで被害が相次いだことで、「自分の家も狙われるかもしれない」と感じた住民は少なくない。共働きで日中家を空ける世帯や、高齢の一人暮らしの家庭では、戸締まりの時間や外出の予定を慎重に考えるようになったという声も聞かれる。
福岡県警は、一連の事件のうち空き巣など56件について3人の関与を認定し、これらを通算した被害総額が約2200万円に達すると説明している。1件あたりに直せば数十万円規模の損失であり、家計にとっては決して小さくない額だ。被害を恐れた住民の中には、防犯カメラやセンサーライトを新たに設置したり、玄関や窓の鍵を二重化したりするなど、追加の出費を受け入れてでも防犯対策を強化する動きが広がっている。
こうした費用をかけられない世帯は、近隣同士で声をかけ合う見守りや、郵便物をためないよう頼み合うなど、日常の工夫で「留守に見えにくい家」を目指している。戸建てが多い地域では、通りから死角になる裏口や勝手口が弱点になりがちで、マンション中心の都市部とは事情が異なる。地域の住宅事情によっても、どんな対策が有効かは変わってくる。
広域に動いた窃盗グループと警察のねらい
今回逮捕されたのは、いずれも無職で住居不定とされる中国籍の男女3人だ。警察は、このグループが拠点を固定せずに移動しながら、留守宅を狙って犯行を重ねたとみている。こうした広域窃盗では、防犯カメラ映像や車両の移動履歴、通信記録など、複数のデジタル情報を組み合わせて足取りを追う捜査手法が定番になりつつある。県境をまたげば管轄も変わるため、情報共有のスピードが事件解明の鍵を握る。
福岡県警は、3人の逮捕と送検を受けて一連の窃盗事件に関する捜査を終結したと説明している。捜査を区切ることは、被害の全体像を住民に示す意味を持つ一方で、「これで本当に安心してよいのか」という問いも残る。広域事件では、複数の都道府県警が合同で捜査本部を設けたり、警察庁が情報を一元的に集約したりする仕組みが整えられており、今回のケースもそうした枠組みの中で進められたとみられる。
一方で、容疑者が外国籍であることだけを切り取って論じれば、特定の国籍や在留者への偏見を強めかねない。治安当局は、国籍ではなく個々の犯罪事実にもとづいて処理するのが原則であり、在留外国人コミュニティとの信頼関係を維持することも再発防止の一部だ。住民にとって重要なのは、「誰が犯人か」だけでなく、「同じような手口をどう防ぐか」という実務的な課題である。
広域窃盗はなくならない？ 地域に残る課題
広い範囲を移動しながら空き巣などを繰り返す窃盗グループは、今回が初めてではない。警察庁の犯罪情勢をまとめた資料では、2000年代半ばに中国籍の男らによるグループが14都県で約1100件の空き巣などを重ね、被害総額が約55億円に達した事例が紹介されている。規模こそ異なるものの、地域をまたぎ同じ手口を繰り返すという構図は、現在の事件とも重なる部分がある。
ここ20年ほどで、防犯カメラやスマートロックといった機器が一般家庭にも広く普及し、抑止力として一定の効果を上げてきた。一方で、窃盗グループもカメラの死角を狙ったり、短時間で施錠を破る道具を使ったりと、手口を巧妙化させている。高額な機器に頼れない世帯が多いことを踏まえると、玄関先を明るく保つ、植栽で見通しを悪くしない、近隣と不審者情報を共有するといった低コストの対策も改めて重要になっている。
広域の窃盗事件を完全にゼロにすることは難しいが、警察による地道な捜査と、住民の日常的な工夫を積み重ねることで「狙われにくい街」に近づける余地はある。今回の捜査終結は一つの区切りにすぎず、被害に遭った地域がどのように安心感を取り戻すかが、これからの静かな課題として残されている。
