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酸化ガリウム（β-Ga2O3、次世代のパワー半導体材料）で先行するノベルクリスタルテクノロジー（埼玉県狭山市、倉又朗人社長）が、ウエハーづくりの原価を大きく下げる新しい結晶育成法を打ち出した。2025年12月22日に公表した内容では、従来法より高価な貴金属の使用を減らし、コストを従来の約1割まで圧縮できる可能性があるという。6インチは2029年、8インチは2035年に出荷を始める計画だ。
材料コストの急所は「装置」より「貴金属」だった
結晶を育てる工程は、半導体の中でも「材料そのものの値段」が効きやすい。ノベルクリスタルテクノロジーが課題として挙げたのが、従来のEFG法（Edge-defined Film-Fed Growth）で用いる貴金属部材だ。装置が動くたびに、るつぼや部材のコストが積み上がる。量産を考えるほど、この固定費がウエハー単価に直結する。
新手法は「DG法（Drop-fed Growth、液滴供給型）」と名付けた。貴金属製のるつぼを使わない設計にし、加熱の仕方や原料の供給方法も組み替えたという。こうした工夫で、EFG法で必要になりがちな高価な貴金属の使用量を大きく削り、ウエハーの製造コストを圧縮できる見通しを示した。
6インチ、8インチへ 量産ロードマップの「次の壁」
同社は、2029年に直径150ミリの6インチ、2035年に直径200ミリの8インチの出荷開始を計画する。ウエハーが大きくなるほど、同じ装置時間で取れるチップ数が増え、デバイス側のコスト改善につながりやすい。鉄道や電力系統など高耐圧領域での応用が期待される中で、サイズ拡大の道筋を数字で示した意味は小さくない。
一方で、量産化の論点は「大口径化」と「歩留まり」を同時に満たせるかに集約される。貴金属依存を下げればコストは軽くなるが、結晶品質の安定、設備の再現性、供給能力といった別の難所が前に出る。今回の成果は、NEDOの経済安全保障重要技術育成プログラム（K Program）の枠組みで進む。材料の国産化と採算の両立に向け、どの段階で「試作の勝ち筋」を「量産の勝ち筋」へ置き換えられるかが次の焦点になる。
