ガザの武装組織指導者ヤセル・アブシャバブ氏が死亡　内部抗争か攻撃か

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2025.12.06

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パレスチナ自治区ガザ地区で、イスラム組織ハマスと対立しイスラエルから支援を受けてきた武装組織の指導者ヤセル・アブシャバブ氏が死亡した。組織側は、ガザ南部ラファで一族間の争いを収めようとしていた際に銃撃を受けたと発表している一方、イスラエルやパレスチナ側の複数の報道では、内部抗争や抵抗勢力による攻撃など見方が割れている。ガザで人道支援物資の略奪に深く関わってきたとされる人物の死は、飢餓に直面する住民にとって援助がどう守られるのかという新たな問いを突き付けている。

援助を握った民兵の死と、住民の不信

アブシャバブ氏が率いた「人民部隊（ポピュラー・フォーシズ）」は、ガザ南部ラファ周辺を拠点に、イスラエル軍の支配が強い一帯で影響力を拡大してきたとされる。ハマスに敵対するこの民兵組織は、イスラエル軍と連携して治安維持や検問を担う一方、支援物資トラックの行き先を事実上コントロールし、一部を自らの支配地域に優先的に回していたと各国メディアは伝えてきた。

国連人道問題調整事務所（OCHA）の報告でも、ガザに入る食料や小麦粉の大半が「武装集団や飢えた群衆によって途中で奪われ、最も弱い層に届かない」状況が繰り返し指摘されている。その一端を担っていたと名指しされてきたのが、人民部隊だった。住民の中には、隊員がトラックから物資を降ろし自前の倉庫に運ぶ様子を見て、「支援ではなく商売のために奪っている」と受け止める人もいたと報じられている。

一方で、イスラエル軍の保護を受けたこの民兵が、戦闘や略奪の危険が高い道路を通る際の「唯一の護衛役」になっていた地域もある。住民の一部は、危険を冒してでもトラックに群がるしかない現実と、武装組織に守られなければ配給に近づけない現実の間で揺れてきた。指導者の死によって人民部隊の統制力が弱まれば、武装集団同士の縄張り争いや、護衛のない状態でのさらなる略奪が起きるのではないかという不安も広がる。

イスラエルの「代理勢力」戦略が突き当たった壁

アブシャバブ氏は、イスラエルに協力することでハマスに代わる秩序を打ち立てようとした人物とされる。イスラエル側の報道によれば、氏の率いる人民部隊は数百人規模に膨らみ、イスラエル軍の武器供与や連携のもとで、ハマス支配から切り離された「安全地帯」の管理役を任されていた。一方、ハマスや他のパレスチナ勢力は、彼を「イスラエルの代理人」と非難し、暗殺対象として名指ししてきた。

今回の死亡についても、人民部隊は「部族間の揉め事を仲裁する中で撃たれた」と説明するが、イスラエル系メディアは内部抗争、親ハマス系メディアは抵抗勢力による待ち伏せ攻撃と報じ、真相はなお不透明だ。いずれにせよ、イスラエルの後ろ盾を受けた民兵指導者が短期間で標的となり、命を落とした事実は、「イスラエルと組めば安全」という前提がガザ内部では通用しないことを示している。

イスラエルは、ハマスの支配力を削ぐために地元勢力を育てる戦略をとってきたが、国際メディアや専門家の間では、住民の正統性を得られない武装グループを増やすだけだとの批判も強い。援助物資をめぐる略奪が相次ぐなか、OCHAは武装勢力のいない経路と透明性の高い配給体制の確保を訴えている。アブシャバブ氏の死は、誰がガザの治安と援助配分を担うのかという根本的な問いを改めて浮かび上がらせており、その答えが見えない限り、住民の不信と飢えは長く尾を引きそうだ。

援助を握った民兵の死と、住民の不信

イスラエルの「代理勢力」戦略が突き当たった壁

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