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京都大学の武藤誠名誉教授と柿崎文彦特定助教らの研究グループが、大腸がんの予後(治療後の見通し)を患者ごとに見積もる新たな指標「大腸がん総合シグネチュア(GCS)」スコアを示した。患者由来の細胞で遺伝子発現の型を読み解き、臨床で使える形にまとめた点が特徴で、成果は2025年10月31日に学術誌Cancer Scienceへオンライン掲載された。
「次の一手」を決めるための予後スコア
大腸がんの治療は、手術で取り切れたように見えても再発リスクの見極めが難しい。追加の抗がん剤治療を強めるのか、経過観察を手厚くするのかは、患者の負担と利益の両方に直結する。GCSは、腫瘍に関わる遺伝子の「発現パターン」を点数化し、同じ診断名の中でも予後が分かれやすい差を拾おうとする枠組みだ。
たとえば術後の外来で、「念のため治療を足すか、生活を優先して様子を見るか」を迷う場面がある。こうした判断に、病理結果など既存の材料に加えて、分子の情報をもう一枚重ねるのが狙いになる。一方で、検査として回すには測定手順の標準化や、どのタイミングの検体を使うかといった運用面の設計も要る。スコアが示す“差”を、治療選択にどう翻訳するかが次の論点だ。
幹細胞57株から5タイプを抽出し、統合してGCSへ
研究グループは、患者由来大腸がん幹細胞(CRC-SC)の57株についてmRNA発現プロファイルを調べ、正常大腸上皮幹細胞(NCE-SC)と比較した。その結果、発現の特徴で5つのサブタイプを特定した。1つのサブタイプではMUC12、PIGR、PLA2G2A、SLC4A4、ZG16の発現増加が目立ち、残る4つではDEFA6、BST2、MAGEA6、IGF2などの増加が大きかった。培養した細胞の“読み取り結果”が、その患者の転帰と結びついたという。
さらに5つのサブタイプ特異的シグネチュアを統合し、患者ごとに個別化された予後予測のためのGCSスコアへつなげた。京都大学の発表では、200症例以上の患者組織から幹細胞株を蓄積してきた経緯も示され、長期の検体基盤が裏側にある。ポイントは、研究室の分類で終わらせず「患者ごとに使える形」に落とした点だが、現場導入では、腫瘍組織データでも同じように再現できるか、前向きの検証で確かめる段階に入る。
