インド・ゴアのナイトクラブで火災　花火が出火源か　25人死亡の惨事に

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2025.12.08

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インド西部ゴア州の人気リゾート地で6日深夜、観光客や従業員で混み合うナイトクラブが一瞬で炎に包まれた。州政府によると、この火災で少なくとも25人が死亡し、数人がけがを負った。　現場では当初、調理場のガスボンベ爆発が原因とみられていたが、州首相は7日、室内で使われた花火が出火源だった可能性が高いと説明している。　華やかな夜を売り物にしてきたゴアの観光産業に、重い問いが突きつけられている。

炎に追われた客と従業員　深夜の人気クラブで何が起きたか

火災が起きたのは、北部アルポラ村にあるナイトクラブ「Birch by Romeo Lane（バーチ）」だ。州都パナジからおよそ25km、川沿いの遊歩道に面したこの店は、バーやレストラン、ダンスフロアを備え、週末の夜には観光客で埋まることで知られていた。火は6日深夜11時45分ごろに発生し、店内にいた人々が逃げ惑ううちに、建物の大半を短時間で焼き尽くしたと報じられている。

州首相や警察の発表によれば、死亡した25人のうち多くはクラブで働いていた従業員で、ほかに観光客数人も含まれていた。　ダンスフロアにいた人々の一部は、炎から逃れようとして階下の厨房や地下のスペースに走り込んだが、そこは袋小路で、煙に巻かれて動けなくなった人も多かったとされる。避難経路が限られた建物の構造が、犠牲者を増やした可能性が高い。

現場周辺は細い道と水辺に囲まれ、消防車両はクラブから約400m離れた場所に停車せざるを得なかった。　ホースを延ばして消火にあたる消防隊員の動きは、夜の闇と煙の中で何重にも制約を受けたという。観光客の多くは外へ逃げ出せた一方、地下や厨房にいた従業員は最後まで取り残され、窓のない空間で一酸化炭素に倒れた人が少なくなかった。

ガス爆発説から室内花火へ　原因説明が変わった背景

事故直後、地元警察や一部メディアは「厨房付近のガスシリンダーが爆発した」と伝えた。　インドではガスボンベの破損や漏洩に伴う火災が繰り返し起きており、多くの人にとって「よくある最悪の事態」として直感的に受け止められた面もある。だがその後の現場検証で、シリンダー自体は破裂していなかったとの見方が強まり、原因説明は揺れ始める。

7日になって、ゴア州のプラモド・サワント首相は、ガス爆発説を否定したうえで、店内で行われていた「花火の演出」が出火源とみられると述べた。　英語メディア「タイムズ・オブ・インディア」などは、冷たい火花を出すはずの電気式花火が天井の装飾に燃え移った可能性を指摘している。屋内での演出用花火は世界各地のクラブやライブ会場で使われるが、天井までの高さや素材、換気設備など、細かな条件を守らなければ一瞬で危険物になり得る。

火災現場のクラブでは、竹やワラ、ヤシの葉といった可燃性の高い素材が装飾に多用されていたとされる。　火花が一度これらに燃え移れば、炎は天井から壁面へ連鎖的に広がり、照明や音響機器の配線も巻き込んで一気に延焼する。事故のたびに原因究明が進む一方、現場レベルでは「盛り上げる演出」として火薬や火花が安易に持ち込まれ、安全設計が後回しにされる構図が今回も浮かび上がった。

“パーティーの街”ゴアが突きつけられた安全と規制の課題

今回のクラブは、開業前から違法建築の疑いが地元で指摘されていた。川沿いの湿地を埋め立てて建てられたとされ、地区の評議会が一時は取り壊し命令を出したものの、その後の異議申し立てで執行が止められ、営業が続いていたと報じられている。　狭い進入路や避難経路の不足といった構造的な弱点は、多くの関係機関に共有されていたにもかかわらず、十分な是正措置が取られないまま、繁忙期直前の週末を迎えてしまった。

サワント首相は犠牲者遺族への補償を表明するとともに、火災の経緯と責任の所在を調べる「司法調査（マジステリアル・インクワイアリー）」を命じた。　同時に州内のナイトクラブやレストランに対し、一斉の防火査察と安全基準に従わない店舗の閉鎖を指示したとされる。運営側の幹部逮捕やオーナーへの逮捕状発付も伝えられ、許認可を巡って行政側の担当者にまで処分の矛先が向かい始めている。

ゴア州は、年間数百万人の国内外観光客が訪れるインド有数のビーチリゾートであり、「安全に楽しめるパーティーの街」というイメージが経済を支えてきた。　しかし今回の火災は、その土台が、十分に整備されていない建築規制や、防火基準を軽視した営業実態の上に築かれていたことを突きつけたと言える。華やかなナイトライフを誰がどのようなコストで支えるのか――行政の監視強化だけでなく、事業者と利用者の双方が安全への投資をどう受け止めるのかが、これからのゴアに残された大きな課題である。