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金が止まらない。2025年9月29日、国際金価格は再び最高値を更新し、年初来で40%前後の上昇に迫る勢いだ。ここまで持続的に買いが続くのは、インフレの尾を引く気配と、通貨価値への不信が重なったからにほかならない。足元では金が株式を相対的に上回る局面が広がり、「資産の避難先」としての存在感が改めて浮き彫りになった。
金が示す「通貨の体温」
市場の朝は、静かな鐘の音から始まった。為替のドル安がじわりと進み、金は買い気配を強める。29日の取引で金は一時1オンス当たり3798ドルに達し、節目の更新があっさりと既定路線になりつつある。値動きだけを追うと熱狂に見えるが、背景にあるのは通貨の実質的な価値低下に対する用心だ。名目金利の低下観測がにわかに強まり、インフレの再燃リスクも簡単には消えない。こうした時、配当も利息も生まない金が、相対的に「価値の保存」を映す器になる。
年の瀬でもないのに「年間最大級の伸び」という言葉が飛び交うのは、過去の記憶がよみがえるからだ。70年代末の狂騒ほど露骨ではないにせよ、上昇の芯は強く、短期の逆風だけでトレンドが反転する気配は乏しい。むしろ、投資家は一気呵成の高値追いを避け、押し目で厚く買い直す姿勢を強めている。ETFの残高も増え、スポットと先物の需給はタイトさを保つ。相場に過熱感がにじむ一方で、価格の急反落を誘うような信用の偏りは限定的だ。
利下げと発言が映すFRBの悩ましさ
米連邦公開市場委員会(FOMC)は2025年9月18日、政策金利の誘導目標を4.00〜4.25%へと0.25ポイント引き下げた。声明は「見通しの不確実性」に言及し、雇用への下振れリスクに注意を促した。利息を生まない金にとって、名目金利の低下は割引率の低下を意味し、理論価格を押し上げる方向に働く。市場はこの一手を合図に、年内の追加緩和を相応の確率で織り込んだ。ドル指数の軟化は金の買いやすさを一段と後押しし、リスク回避とリスク選好の境目で、金は両にらみの役回りを与えられている。株式が持ち直す局面でも金が崩れにくいのは、政策転換の速度と持続期間がなお読みにくく、ポートフォリオのなかで「保険」の必要性が下がっていないからだ。
ただし、米金融当局は緩和の既成事実化を避けている。パウエル議長は2025年9月24日の講演で、インフレと雇用の「二面リスク」を強調し、「リスクのない道はない」との趣旨を示した。あらかじめ定めた経路は取らないという含みは、10月の追加緩和を確約しない姿勢でもある。つまり、金融環境は緩むが、過度に緩みすぎないよう微調整を続ける段階に入ったということだ。金にとっては追い風と向かい風が交錯するが、現状のメッセージは明快で、短期は上下に振れつつも、中期では高値圏の滞在時間が延びやすい。だからこそ、相場は上に走っても息切れせず、押し目が浅くなる。金融政策の逡巡は、金の保有コストを相対的に改善し、価格の下値を固める効果を持つ。
中銀マネーが支える需給と、上昇の「寿命」
今回の上昇を過去と分けるのは、買い手の層の厚さだ。投機資金だけでなく、中央銀行や長期投資家の参加が目立つ。世界の金市場を継続的に追う調査では、2025年上半期にETFへの資金流入が復活し、四半期ベースでも需給の引き締まりが続く。第2四半期は投資需要がけん引し、金の総需要は前年比で増加した。安定的な中央銀行の買いは、2022年以降で定着しており、各国の準備資産で金の位置づけがじわりと上がっている。外貨準備の分散と地政学の長期化が重なれば、通貨を超えた価値の担保としての金は選択肢にならざるを得ない。足元の価格高騰は宝飾需要の重しにもなるが、投資と公的部門の買いがその分を吸収する構図が続く限り、需給の土台は揺らぎにくい。
もちろん、上昇の寿命は永遠ではない。過度な円滑化が物価の再燃を招けば、いずれ引き締めの再加速が必要になる。逆に景気が想定以上に減速すれば、インフレが素直に低下し、実質金利は持ち直す。どちらの道でも、金にとっては「調整の理由」になり得る。だが現時点で確認されている範囲では、中央銀行の購入意欲と、政策運営の試行錯誤が同時に存在する。この二つが併走する限り、相場が高値圏で滞在する確率は小さくない。投資家に必要なのは、熱狂でも失望でもなく、周期に合わせて持ち高を整える冷静さだ。70年代のような一気呵成のバブルではなく、長い坂道を確かめながら上がる上昇。金は今、その物語の途中にいる。