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花角英世知事が東京電力福島第1原発の構内を歩いたのは、2025年11月18日のことだ。事故現場を自らの目で確かめたその知事が、今度は柏崎刈羽原発の再稼働を「認める」かどうか、ぎりぎりの判断に向き合っている。複数の関係者によると、国や東京電力から安全対策と防災対策の履行を改めて確認した上で、21日にも再稼働容認の考えを公表する方向が強まっているという。
知事判断の舞台裏 地元同意と県民意識のずれ
柏崎刈羽原発が立地する柏崎市と刈羽村は、すでに再稼働を受け入れる姿勢を示している。一方で、県が行った県民意識調査では「再稼働の条件は現状で整っていない」と答えた人が県全体でおよそ6割に達し、依然として不安が勝っていることが浮かんだ。 花角知事は、公聴会や県内30市町村長との懇談会、意識調査を重ねて県民の声を探り、自らの判断とどう結びつけるかを慎重に探ってきた。その結論を示す場として、12月2日に始まる県議会で関連予算案を提出し、議会の議決や付帯決議という形で信任を得る案が有力とみられている。
こうした判断の前提として、国側の動きも加速した。花角知事の要請を受け、原発から6方向に伸びる避難道路の整備が国の事業として位置付けられたほか、原発から半径30キロ圏内の地域を対象に、事故時に屋内退避するためのシェルターを国費で整備する方針が示された。30キロ圏は、重大事故の際に避難や屋内退避が必要になる「UPZ」と呼ばれる範囲で、これまでも新潟県は対策の不備を繰り返し指摘してきた経緯がある。避難道路などの公共事業を支える特別措置法の対象に同地域が加わったことで、県が掲げてきた防災面の条件は、形式上は大きく前進した格好だ。
東電の安全対策と1000億円 なお残る「信頼」という課題
一方の東京電力は、かつてテロ対策の重大な不備を指摘され運転禁止処分も受けた柏崎刈羽原発で、安全対策の上積みを急いできた。津波対策や排気設備の強化に加え、敷地への出入り口には複数の生体認証装置を設け、なりすましや不正侵入を防ぐ仕組みを整えたと説明する。原子力規制委員会の審査に合格した6号機と7号機のうち、特に6号機は制御棒の不具合点検などを終え、技術的な準備が整ったとされる。 世界最大級の出力を持ちながら2012年から止まったままの巨大設備を動かすことは、電力需給や国のエネルギー政策の面では大きな意味を持つが、その重さを受け止めるのは地元の人々だ。
東電は、成長分野の企業が県内に進出する際の支援や、1号機と2号機の廃炉検討、そして県などへの総額1000億円規模の資金拠出といった地域振興策も並行して打ち出している。 だが県民意識調査では、原発から30キロ圏内の9市町村の多くで「再稼働の条件は整っていない」との回答が過半数を占め、同社が原発を運転すること自体に「心配」を抱く人も少なくなかった。 追加調査でも東電への不信感の根強さが示されており、花角知事は最終判断にあたり、実施されていない対策の期限付き履行や、情報公開の徹底など、信頼回復の具体策を一段と求めるとみられる。その要請にどう応えるかが、再稼働後も続く東電の宿題になる。
知事の一言で全てが決まるわけではなく、その後も原発のそばで暮らし続ける人たちの日々が静かに続いていく。
