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広島市西区中広町の集合住宅で、2025年10月15日 18:30ごろ、30代のベトナム人女性が頭部から血を流して倒れているのが見つかり、その場で死亡が確認された。夫とみられる男性が交番に「妻が倒れている」と届け出たことが発端だ。警察は殺人事件として捜査を進め、逃走した可能性のある犯人の行方を追っている。静かな住宅街に緊張が走った夜である。
夕暮れの通報が告げた異変
夕暮れの住宅街に、規制線の黄色が張り渡された。通報は交番に直接持ち込まれたとされ、近くに住む男性が「妻が血を流して倒れている」と訴えたという。現場は市中心部に近い中広町の集合住宅で、街灯の下には警察車両が並び、住民が不安そうに様子をうかがっていた。何が起きたのか、緊張がじわりと広がっていた。
警察官らが駆けつけると、部屋の中で女性が仰向けの状態で倒れていた。頭部付近に傷があり、到着時には心肺停止の状態だったとされる。現場で死亡が確認されたという点で各社の報道は一致しており、現時点で確認されている範囲では、女性は夫とともに暮らしていたベトナム国籍の30代とみられる。生活の気配が残る室内で、突然の死が告げられた格好だ。
一部報道によれば、発見場所は集合住宅の高層階で、JR横川駅から南西に約1.3キロの一角とされる。平日の夜、帰宅の足取りが交錯する時間帯に起きた出来事であり、周辺は普段なら家路を急ぐ人々で満ちる。エレベーターの到着音や遠くの車の走行音が、異様な静けさの中で際立って聞こえたと住民は口をそろえる。
残された足跡と捜査の焦点
現場には血のついた足跡が残されていたと報じられている。凶器の特定や侵入経路の有無は明らかになっていないが、室内の状況から「何者かが逃走した可能性」に捜査の照準が合う。広島西署を中心に鑑識作業が進み、足跡の採取や室内の血痕解析、ドアや窓の接触痕など、犯行の手がかりを拾い上げる作業が続いているとみられる。
報道の時系列をたどると、2025年10月15日 19:58には共同通信が女性の死亡確認と血痕の足跡に言及し、20:45には地元局が現場から規制線の様子を伝えた。さらに23:55には全国ネットが「夫婦はいずれもベトナム国籍」とし、足跡の存在を改めて報じている。断片が少しずつ重なり、事件像の輪郭が夜のうちに立ち上がっていったと映る。
今後の焦点は三つある。第一に死因と死亡推定時刻の確定である。頭部の損傷の程度や形状から凶器の特定が進む可能性がある。第二に建物内外の防犯カメラ解析だ。出入口やエレベーターの動線、時間帯の不審な出入りが絞り込まれるだろう。第三に周辺の聞き込みである。物音、口論、足音、異臭などの微細な記憶が、時間軸の補強に資するはずだ。いずれも現時点では確定情報が限られており、警察の正式な説明を待つ段階にある。
揺れる地域社会に広がる不安と備え
住民の間には「鍵はいつもより念入りに」「夜間の一人歩きを控える」といった会話が広がっている。集合住宅の共用部は暮らしの延長だが、見知らぬ影が紛れ込みやすい面もある。エントランスのオートロックや宅配の受け取り方、エレベーターの乗り合わせなど、日常の所作を一度立ち止まって見直す機会になっているといえる。見守りの視線が交差する夜だ。
一方で、被害者や周辺の外国人コミュニティに配慮した支援の目線も欠かせない。事件直後は憶測が先行しがちだが、出自や国籍を理由に不安や偏見が増幅すれば、情報提供が届きにくくなる。現時点で確認されている範囲の事実を丁寧に共有し、必要な多言語情報を用意することが、捜査と地域の安心の両立に結びつくとみられる。
規制線の向こう側に残ったのは、突然失われた一人の命と、答えを求める家族と地域のまなざしである。続報は警察の発表を待つしかないが、目撃や不審情報があれば迷わず110番や最寄りの交番へ届けてほしい。夜が明けるたびに、事件の真相へ一歩ずつ近づく。そんな期待と不安が入り混じる朝が、広島の街にもたらされている。
