本サイトの記事や画像はAIが公的資料や報道を整理し制作したものです。[続きを表示]ただし誤りや不確定な情報が含まれることがありますので、参考の一助としてご覧いただき、実際の判断は公的資料や他の報道を直接ご確認ください。[私たちの取り組み]
香港政府は28日、香港北部・大埔地区の高層住宅団地で起きた大規模火災で、死者が少なくとも128人、負傷者が79人に達したと発表し、2日近く続いた救助活動の終了を明らかにした。行方不明は約200人に上り、戦後最悪級の火災は、多くの市民の暮らしと香港の防災体制に深い傷を残した。
暮らしを襲った炎―高層団地の住民に何が起きたか
火災が起きたのは、公営住宅として知られる宏福苑（Wang Fuk Court）だ。30階前後の棟が並ぶ巨大団地には、高齢者や子育て世帯、フィリピンやインドネシアからの家事労働者など数千人が暮らしていた。炎は午後に発生し、強い風と足場を伝って一気に広がったとされる。
当局によれば、死者128人のほか79人が負傷し、その中には12人の消防士も含まれる。長時間の活動で疲労が蓄積するなか、隊員の1人は殉職したとAP通信は伝えている。住民の多くは近くの体育館などに避難し、スマートフォンを握りしめて家族や友人の安否を待ち続けている。
行方が分からない人はおよそ200人。中には雇い主の留守中に在宅していた外国人家事労働者も含まれ、各国の領事館が照会を急いでいる。平日の日中、洗濯物が揺れ、子どもの声が響いていたはずの団地は、いま黒く焼け焦げた外壁と沈黙だけが残る。
改修工事と安全規制のほころび
ロイター通信などによると、団地は外壁改修のため竹製の足場と緑色の防護ネットで覆われていた。香港政府の治安当局トップは会見で、団地内の火災報知設備が適切に作動していなかったと認め、延焼と避難遅れの一因になった可能性を示した。
警察は、窓周りをふさぐ可燃性の断熱材を使用するなど安全基準に反した疑いがあるとして、改修工事を請け負った建設会社の幹部らを過失致死容疑で逮捕した。汚職摘発を担う当局も複数の技術者を拘束しており、工事契約の決定過程で不正がなかったかを調べている。
一部の住民は火災前から、足場のネットや資材が避難経路を塞いでいると当局に訴えていたものの、抜本的な改善にはつながらなかったと香港メディアは報じる。1980年代に建てられた高層公営住宅は、アジア各地でも老朽化と改修需要が重なっており、工事の安全管理が追いついていない実態が浮き彫りになった。
グレンフェル以後の世界と、香港が問われる選択
高層住宅の改修が大惨事を招いた例として、多くの海外メディアは2017年のロンドン・グレンフェルタワー火災を想起している。外壁に使われた可燃性パネルが炎の通り道となり、英国ではその後、外装材や避難計画の見直しが急速に進んだ。今回の香港の火災も、同様の議論を世界規模で再燃させつつある。
香港政府は被災者支援のための基金創設や一時住宅の提供を打ち出した。併せて建築安全基準や検査体制を総点検する方針だが、その際に、低所得層や外国人労働者など声の届きにくい人々の暮らしをどう守るかが問われる。火災リスクを誰がどこまで負担するのかという問題は、補償額の多寡だけでは測れない。
都市の高層住宅は、老朽化と人口集中のはざまで世界各地で似た課題を抱えている。香港での悲劇は、経済効率を優先した工事や形式的な検査が、ひとたび歯車を狂わせれば取り返しのつかない犠牲を生むことを示した。誰の生活を前提に安全基準を組み立てるのか、その問いが静かに突きつけられている。
