フランス・原潜収容基地をドローンが接近　欧州で相次ぐ未確認機への警戒強まる

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2025.12.06

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フランス西部ブルターニュ地方のイール・ロング海軍基地上空で4日夕、複数の小型無人機が確認され、5日に軍検察が電子妨害装置による迎撃を公表した。弾道ミサイル搭載原子力潜水艦を収容する核抑止の中枢が標的となり、欧州各地の空港や軍事・産業インフラでも正体不明のドローンが相次ぐなか、重要施設をどう守るかが改めて問われている。

核抑止の拠点をかすめた小型ドローンの衝撃

軍関係者によると、4日午後7時半ごろ、ブレスト港に面したイール・ロング基地上空で5機の無人機がレーダーなどで探知された。基地防衛を担う海軍歩兵部隊が対ドローン手順を発動し、通信を妨害する装置で飛行を封じたと、レンヌの軍検察は説明している。

同基地には弾道ミサイル搭載原潜4隻が配備され、少なくとも1隻が常時出航してフランスの核抑止力を支えている。日々約2,000人が出入りする巨大施設に、市販品に近い小さなドローンが接近した事実は、兵士だけでなく地元住民にも静かな不安をもたらした。

検察は5日に捜査を開始し、機体の種類や正確な機数、操縦者の特定を進めている。担当検察官は現時点で「外国勢力の介入は示されていない」としつつ、11月にも周辺半島上空で不審な飛行があったと述べ、継続的な警戒が必要だとの認識を示した。

欧州で続く空港・軍施設上空の「謎の飛行体」

今回の事案は、欧州全域で続く「謎の飛行体」騒ぎの一部にすぎない。ここ数カ月、北欧やドイツ、ベルギーなどでは空港周辺でのドローン目撃が相次ぎ、一部では滑走路閉鎖や便の欠航に追い込まれたほか、軍基地や発電所、石油・ガス施設の近傍でも同様の報告が出ている。

エストニアやポーランドなど一部のNATO諸国では、こうした飛行の背後にロシアの関与があるとの見方を政府や専門家が示してきた。通信やインフラを狙う破壊工作だけでなく、住民の不安をあおる心理戦と組み合わさった「ハイブリッド脅威」として警戒する声もあるが、多くの案件で出自は特定されていない。

技術面でも、小型ドローンは低高度を低速で飛ぶためレーダーに映りにくく、騒音や光も少ない。空港や発電所の運営者が単独で探知システムや妨害装置をそろえるには費用負担が重く、各国の警察・軍との役割分担も十分に整理されていない。

誰が防ぎ、誰が費用を負うのか　対ドローン網のこれから

フランス軍が今回は妨害電波で対応したように、対ドローン手段は電子的な無力化から実弾による撃墜まで幅がある。だが人口密集地や原子力関連施設の近くで機体を落とせば、破片や搭載物が新たな危険を生む可能性があり、空と地上双方の安全をどう両立させるかが課題だ。

責任の所在もあいまいだ。軍事基地であれば国防当局が前面に立てるが、空港や工場、港湾など民間インフラでは運営会社と警察、軍の連携が不可欠で、それぞれが別々に高価なレーダーやジャマーを整備すればコストは膨らみ効率も悪い。

一方で、測量や物流など合法的なドローン利用も広がっており、単純な全面規制は現実的でない。専門家からは、重要施設周辺の飛行禁止空域の明確化と厳罰化、監視ネットワークや機体登録制度の徹底といった提案が出ている。イール・ロングでの小さな機体の飛来は静かな湾岸に走った警鐘でもある。この異変を欧州がどこまで教訓に変えられるのかが、今後の焦点となる。