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国際通貨基金（IMF）のゲオルギエワ専務理事は2025年10月17日、年次総会の会見で、米中がレアアースの輸出を制限しない合意に達することへの期待を示し、制限が導入されれば世界の経済成長に重大な影響を与えると警告した。製造業とエネルギー転換の要である希少資源を巡る緊張が、高まる不確実性とともに景色を変えつつある。
レアアースを巡る火種と成長のかたち
ワシントンの会場は記者のざわめきで満ち、壇上の専務理事は静かに言葉を選んだ。レアアースを巡る摩擦が激すれば、サプライチェーンの脆さが露出し、投資や生産の計画が一斉に鈍ると示唆した。合意が整えば緊張は和らぐが、逆なら波紋は広がるとの見立てである。
レアアースは電気自動車のモーター、風力発電の磁石、半導体や防衛機器に欠かせない。供給の大半が一部地域に偏る現実が、市場の神経を逆なでする。輸出規制は価格の乱高下を招き、在庫積み増しや迂回調達を強いるため、成長率を押し下げる圧力となると映る。
専務理事は、米中が輸出を縛らない道を探ることを強く望むと語り、もし制限が現実になれば世界成長への影響は「重大」になると警鐘を鳴らした。政治判断が供給の細い管を締めるか緩めるかで、景気の温度が変わるという現実が浮かぶ。
年次総会で見えた「新常態」の影
同氏は年次総会に合わせた別の会見でも、世界経済は「恐れていたほど悪くはないが、必要なほど良くもない」と述べ、不確実性が一段と増していると強調した。IMFは世界成長率を2024年3.3%、2025年3.2%、2026年3.1%と見通し、勢いの鈍さが続くとした。
こうした低空飛行のもとで、レアアースの流れが止まるシナリオは、企業の投資判断を遅らせ、貿易や生産の振幅を増幅させる。不確実性が「新常態」となる中で、政策リスクの追加は成長の裾野を狭め、金融市場のボラティリティを高めかねないと映る。
IMFは、民間部門の適応力と貿易の開放性が成長のエンジンであると繰り返す。供給網の再設計や調達先の多様化は進むが、制度的な安定と予見可能性なくしては限界がある。レアアースを巡る合意は、その前提条件を整える試金石になる。
日本と企業にとっての含意
日本にとっても他人事ではない。自動車、電子部品、再エネ機器の裾野にレアアースが張り巡らされ、価格と納期の乱れは工場の稼働計画に直撃する。為替の振れと重なるとコスト転嫁は難しく、収益の変動が大きくなるリスクがにわかに強まる。
目先は在庫と調達の柔軟性を高め、中期ではリサイクルや代替素材の技術投資を積み上げることが現実的だ。政府間では透明性のある対話チャネルを維持し、特定資源の過度な集中を避ける多国間枠組みを育てることが要るとみられる。
会場を出る記者の足取りは速かった。市場は一つの言葉で揺れる。不確実性が新常態となる時代に、政治はどこまで予見可能性を提供できるか。レアアースを巡る米中の次の一手が、来年の世界の景色を大きく左右すると映る。
