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インドと中国を結ぶ直行便が10月26日夜、約5年ぶりに動き出した。IndiGoがコルカタ－広州線の運航を再開し、11月には中国東方航空が上海－デリー線を立ち上げる。冷えた往来に一本の通路が戻り、経済と人の流れの回復を占う動きが静かに広がっている。両国関係の節目を告げる便と映る。
深夜の滑走路に戻った直行の灯
コルカタの夜、ターミナルのガラス越しに青い誘導灯が連なり、行き先に「広州」の文字が戻った。空席待ちの客が掲げるボーディングパス、手慣れた出入国の列、かすかなざわめき。直行の扉が再び開いたことで、東南アジアや香港での乗り継ぎを重ねてきた人々に、時間の短縮と不測のリスク低減が現実味を帯びたとみられる。
現地報道では、初便が10月27日早朝に広州へ到着したと伝えられた。他方で一部の旅行サイトでは当日の便が運休表示となるなど情報が錯綜し、初便の運航状況には揺れもあったとみられる。いずれにせよ、定期直行という交通の幹が戻った意味は大きい。揺れを踏まえても、継続運航が確認されれば実需は徐々に追随すると映る。
「約5年ぶり」の再開は、人の往来が止まった長い空白を思い起こさせる。パンデミック下で国際便が止まり、2020年の国境情勢の緊張で直行の復元は先送りされてきた経緯がある。航空路は最も政治と市場の影響を受けやすい。だからこそ、日々の離発着が関係改善の温度計となり、出張や仕入れ、留学や診療の計画に具体性を与えるのである。
航空各社の再開計画と足取り
IndiGoは10月2日、コルカタ－広州の毎日運航を10月26日から再開すると発表した。機材はA320neoとされ、規制当局の承認を前提にデリー－広州の直行も順次立ち上げるとしている。発表文は「最近の外交的なイニシアチブに続く再開」と位置づけ、貿易や観光の再活性化に言及した。足取りは慎重だが、運航計画は明確である。
中国東方航空も10月24日に動いた。11月9日から上海－デリーの直行便を週3往復で再開すると告知し、A330-200での運航を掲げた。両都市を結ぶ幹線の復活は、製造・IT・学術の往来を支える基幹的な回線の復旧に当たる。復路の時間帯も含めたダイヤは発着地の利便を意識した設計で、接続網の広い上海発着の強みがにじむ。
各社のアナウンスが相次いだことで、ビジネス客と商材を扱う中小企業にとっての移動計画は具体化しつつある。通関や保険、為替に目配りしながらも、直行による日程短縮は交渉や視察の頻度を押し上げる要素になる。現時点で確認されている範囲では、運賃や周波数は各社発表ベースで動いており、年末に向けた需要の手応えが焦点となる。
止まっていた往来の背景とこれから
往来が止まった背景には、感染症の世界的流行と、それに伴う水際措置の長期化があった。さらに国境をめぐる緊張が重なり、直行便の再開は慎重に進められてきた経緯がある。人の流れは一度細ると回復に時間を要するが、便が定期的に飛ぶだけで心理的な距離は縮まり、ビザ申請や保険加入といった実務の判断も前へ進みやすくなる。
今回の再開は、両国間の対話の積み上げと航空行政の調整が形になった一歩だといえる。路線の継続性は、需要と運航コスト、そして双方向の査証制度や航空権の枠組みに左右される。今後は貨物の搭載状況や乗継需要の取り込みも鍵となり、片道だけが混む「片効き」をどう均すかが各社の運航戦略を占う。
初便の実績をめぐっては、着陸が確認されたとの報道がある一方で、運休表示も散見されるなど情報に揺れが残る。現時点で確認されている範囲では、路線自体の再開は各社が公表済みで、11月以降のダイヤも告知されている。定時性の評価はこれからだ。深夜の滑走路に戻った灯が、季節運航ではなく日常の光景として定着するかが問われる。
