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診察室の前で順番を待つ子どもの咳が、静かな午前の外来に重なる。こうした光景が各地で広がるなか、厚生労働省は2025年11月21日、季節性インフルエンザの患者数が全国平均で1医療機関あたり37.73人となり、全国的に警報レベルに達したと公表した。新型コロナの流行後も続く呼吸器感染症の波の中で、この数字は改めて警戒を促すものとなっている。
全国平均37.73人 13週連続増加が示すもの
今回の値は、11月16日までの1週間に全国およそ3000の定点医療機関から報告された患者数を平均したものだ。1医療機関あたり37.73人という水準は、前の週の21.82人から約1.7倍に増え、流行開始から13週続けて増加が確認されたことになる。短い期間での急な伸びは、地域医療の負担が一気に高まりかねない局面に入ったことを意味している。
地域ごとの差も大きい。定点あたり患者数が最も多かった宮城では80.02人に達し、埼玉が70.01人、福島が58.54人で続いた。合計24の都道府県で、警報レベルの指標とされる30人を上回っており、一部のエリアに限られた流行ではなく、複数の地方で大きな波が同時に立ち上がっている構図がうかがえる。
ここで示される人数は、全国の患者の総数そのものではない。感染動向を把握するために選ばれた「定点医療機関」の平均値であり、その背後にはさらに多くの人々の発熱や咳がある。厚労省は毎週、こうした定点の報告を集計し、流行の大きさや医療体制の準備状況を評価している。数字は小さく見えても、医療現場にとっては先を読むための重要なサインになっている。
「警報レベル」の基準と、私たちにできる対策
インフルエンザの指標には、流行の段階ごとに複数の基準が設けられている。多くの自治体では、定点あたり1人でシーズン入り、10人で「注意報」、30人で「警報」と位置づけ、大きな流行が発生または続いている目安としている。終息の判断は、定点あたり報告数が10人未満に下がることが目安だ。全国平均が30人を超えたという今回の発表は、シーズンの中でも一段高い警戒段階に入ったことを示すサインといえる。
影響を受けやすいのは、高齢者や基礎疾患のある人、妊娠中の人、そして小さな子どもたちだとされる。こうした人が周囲にいる家庭では、ワクチン接種のほか、体調がすぐれないときには無理をして出勤・登校しないことが大切になる。悪化を防ぐためには、早めの受診や解熱剤の自己判断での多用を避けることなど、日常の行動を少しだけ変える工夫が求められる。
厚労省は、うがいや手洗い、適切なマスクの着用、こまめな換気といった基本的な対策の継続を呼びかけている。昨シーズンは年末に定点あたり40人を超える水準に達し、入院者や学級閉鎖が相次いだ地域もあった。今回、全国平均が早い段階で警報レベルに乗ったことで、同じような負荷を繰り返さないための備えを、今のうちからどこまで積み上げられるかが問われている。
まだ寒さが深まりきらない外来の待合室で、掲示板の「インフルエンザ警報発令中」という張り紙だけが、これから続く数週間の重さを静かに物語っている。
