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透明なクリーンルームの奥で、技術者が小さなパッケージを光にかざす。米インテルが次世代PC向け半導体「パンサーレイク」の生産を始めた。初の18A（1.8ナノ級）採用製品で、年内に高い生産水準へ移行し、2026年1月の市場投入を見込む。米アリゾナの新工場を起点に、先端ロジックの主戦場を再び引き寄せる動きが加速していると映る。
アリゾナの新工場で動き始めた18A
インテルは2025年10月9日に、パンサーレイクのアーキテクチャを公開し、初の18A採用クライアントSoCであることを明らかにした。発表では「すでに生産に入っており、年内に高い生産水準へ移行する」と強調。アリゾナ州チャンドラーの新工場「Fab 52」で量産を担う体制を示し、米国内の最先端製造を前面に押し出した姿勢がにじむ。
続く10月14日には、販売計画の目安として「2026年1月に店頭販売開始」と補足された。年内出荷・年明け本格展開という段取りで、年末年始にかけてPCメーカー各社が新機種投入のタイミングを見計らう構図が浮かぶ。工場の内部写真が公開され、クリーンルームで製品を手にする技術者の姿が、立ち上げ局面の確度を物語っているといえる。
18Aの製造は、開発・初期生産を進めたオレゴンから、アリゾナでの高量産へとリレーする計画だ。Fab 52は同社オコティーヨ拠点で5番目の高量産工場として稼働し、複数世代にわたる18A系製品の製造拠点となる。米国内で最先端を作る意義を前面化し、供給網の強靭化を訴求する狙いが透けて見える。
初のGAA「RibbonFET」とPowerVia
18Aは、ゲートオールアラウンド構造の「RibbonFET」と、電源配線を裏面化する「PowerVia」を核に据える。新トランジスタ構造によりスイッチ効率と電力特性を詰め、裏面給電で配線混雑と電圧降下を抑え込む発想だ。パンサーレイクはこのプロセス上に、CPUタイルとGPU、NPUなどを統合。従来世代からの性能と効率の底上げを前提に、AI処理も含めた全体のスループットを押し上げる設計思想がにじむ。
製品はマルチチップレットのスケーラブル設計を採り、フォームファクターや価格帯に応じて柔軟に構成を最適化できるとされる。グラフィックスは新世代アーキテクチャを採用し、プラットフォーム全体のAI推論性能も強化。電力効率は前世代の省電力系統に匹敵しつつ、総合性能ではメインストリーム級を狙うといった、両立の方向性が見える。生成AIやオフラインAIの需要が増すなか、ノートPCからエッジ機器まで適用範囲を広げる狙いだ。
先端実装では3D積層の「Foveros」を組み合わせ、異種チップの統合自由度を高める。18Aの微細化と実装の相乗で、同一電力枠での処理密度を押し上げる発想である。各種ベンチマークの数値は今後の量産個体での検証を待つが、設計思想と製造技術の両輪で、PCプラットフォームの体験を引き上げる構図が広がっている。
サーバーは2026年前半へ、巻き返しの行方
データセンター向けでは、Eコア路線の次期製品「Clearwater Forest（Xeon 6+）」を18Aで展開する計画だ。発表時点で2026年前半の投入を見込み、こちらもFab 52での製造を前提に据える。クライアントのパンサーレイクとサーバーのClearwater Forestを同一ノードで並走させ、設計資産やサプライの相乗を狙う青写真である。
同社は自社製品に加えてファウンドリー事業も掲げるが、18Aの量産化はその実効性を示す試金石となる。先端世代ではアジア勢が攻勢を強めるなか、米国内の先端供給能力を前面化して設計顧客を呼び込めるかが焦点だ。年末の量産立ち上げと年明けの市場投入が順調に進めば、歩留まりや電力効率、冷却設計などの実機データが出そろい、採用拡大の判断材料が整ってくるとみられる。
パンサーレイクの量産移行は、同社の工程改善と開発・製造の連携が機能し始めたことを示唆する出来事である。一方で、市場が本当に求めるのはノートPCの駆動時間やAI体験の体感差であり、数字の上の優位をどう使い手の価値に変えるかが問われる。新工場の稼働音が高まるアリゾナから、その答えがまもなく届く。
