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記者団を前に、ジム・オキャラハン法相が数字を読み上げる声がやや強まった。人口増加率1.6%、EU平均の約7倍――。11月26日、アイルランド政府は移民と難民の受け入れ条件を一斉に厳しくする方針を打ち出した。住宅不足や公共サービスの逼迫が続くなか、「制御された人口増」が必要だと判断したからだ。
なぜいまアイルランドは移民を絞ろうとしているのか
島国アイルランドの人口は推計約546万人とされ、ここ10年で約15%増えたと統計局は示している。2024年の増加率は約1.6%で、EU平均の数倍という水準だ。背景には出生の多さだけでなく、就労や留学、避難を目的とした人々の流入がある。ダブリンでは家賃が高騰し、医療や教育の現場からも「これ以上は支えきれない」という声があがっている。
とりわけ難民申請は急増している。国際保護の申請者は2023年の約1万3千人から、2024年には1万8651人と過去最多になった。多くは英領北アイルランド側から陸路で入り、空港の審査を経ない形だという。ホテルや仮設テントを使った一時宿泊施設は各地で満員となり、ダブリン近郊では難民向け宿泊所の前で行われた抗議デモが一部暴動に発展した。
こうした状況を踏まえ、政府は制度の「入口」と「出口」の両方を絞ろうとしている。まず、難民として保護を受けた人が市民権を申請できるまでの居住期間は、現行の3年から5年に延びる。就労中の申請者には、国が用意する宿泊施設の家賃として収入の1〜4割を負担させる。さらに、欧州経済領域外の家族を呼び寄せるには年収4万4千ユーロ超や十分な住居を示す必要があり、学生ビザの発給数制限も検討中だ。
英国発の波紋と広がる政治の分断
今回の動きには、隣の英国の政策転換も影を落としている。英国政府は近年、不法入国者の送還を容易にするなど移民規制を相次いで強化してきた。厳格化が進めば、海峡を渡る代わりに陸続きで入れるアイルランドを目指す人が増えるとの懸念がある。ミホル・マーティン首相は「他国の措置は必ず波及する」と述べ、自国も備えを整える必要があると語った。
英国では、反移民色の濃い政党リフォームUKが台頭し、移民政策をめぐる世論調査で主要政党より高い信頼を得ているとの結果も出ている。アイルランドでも、サイモン・ハリス副首相が「移民が多過ぎる」と発言すると、左派野党から「極右への犬笛だ」と批判が起きた。新制度では重大犯罪や安全保障上の脅威と判断された難民の認定を取り消せるようにする案も盛り込まれ、人権団体は「二級市民を生みかねない」と警戒している。
一方で、労働力不足に悩む先進国にとって移民は欠かせない存在でもある。アイルランドの人口増の多くは就労者や留学生によるもので、経済成長を支えてきた側面も否定できない。少子高齢化が進む日本もまた、受け入れ拡大と社会の不安のあいだで揺れている。人口をどう維持し、誰と暮らしていくのかという問いが、アイルランドの議論を通じて静かに浮かび上がっている。
