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わなを確かめに山に入った70代の猟友会員が、林から現れたクマに襲われた。糸魚川市は11月7日、市内で10月27日に発生したこの人身被害を公表した。男性は右腕を骨折し右ひざにもかみ傷。自力で下山して救急搬送され、入院治療が続く。市は公表までに時間を要したとしている。
山中の見回り、突然の遭遇
10月27日 11時30分ごろ、糸魚川市仙納の山中での有害鳥獣対策の見回り。男性は設置したわなを1人で点検していた。林の奥から成獣とみられるクマが突然姿を見せ、距離を詰めてきた。逃げ場の少ない斜面で押し倒され、右腕と右ひざに噛みつかれたという。
体格や頭数の詳細は不明で、遭遇は一瞬の出来事だった。男性は負傷しながらも冷静さを保ち、山を自力で下りた。関係機関が救急搬送し、現在も入院中だ。重い骨折は作業の動線に影を落とすが、命は守られた。現場には、いつもの装備と経験が残った。
同日、市の情報記録には能生地域の仙納で同刻のクマ1頭の目撃が載る。林道に響いたわずかな気配が、作業の手順を一変させたのだろう。見回りという日常の動きは、たった1度の遭遇で別の意味を帯びる。静けさの裏で、緊張は長く続く。
公表の経緯と広がる注意
市が被害を公表したのは11月7日。発生から日数を置いての発表となった。被害者の回復状況を確認しながら事情を聴取するため、情報整理に時間がかかったとされる。地域の安全情報は、速さと正確さの両輪で動く。現場で起きたことを確かめる工程が挟まる。
市は目撃や出没の情報発信を続け、注意喚起を強めている。山へ入る際は複数で行動し、鈴やラジオなど音の出る道具を携える。早朝や夕方の行動を避け、作業前後に周囲の痕跡を確かめる。基本の備えは地味だが、被害の入口を遠ざける。
落ち葉を踏む足音の先で、見回りの手は今日もわなを確かめる。日常の作業に潜む揺らぎは消えないが、用心の積み重ねが道を照らす。静かな山の気配は、ひとりひとりの振る舞いで少しだけ穏やかになる。次の季節を待つ間、警戒は続く。
