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動画の再生ボタンを押す手が止まらない。ジャック・シュロスバーグ氏が2025年11月13日、マンハッタン中心部を含む選挙区から米連邦下院選への出馬を表明した。故ジョン・F・ケネディ元大統領の直系として初めて国政選挙に挑むとみられ、世代交代の行方を占う一手になる。引退を表明したジェリー・ナドラー議員の後任を争う民主党予備選で、物価高と腐敗の克服を掲げる。
動画で示した危機感と訴え
出馬表明の動画で同氏は「この国は転換期にある」と切り出し、生活費の高騰を引き起こしたとする大統領の「ビッグ・ビューティフル・ビル」を名指しで批判した。医療や教育、保育などの社会保障の大幅削減を「歴史的」と形容し、いまの政治を「危機があらゆる層で重なる状況」と描いた。
さらに、権力の側が「勝者と敗者を選ぶ」状態は資本主義ではなく縁故主義だと指摘し、権利の一時停止や反対意見の抑圧に警鐘を鳴らした。連邦下院選（任期2年の議員を選ぶ選挙）で与党が主導権を取り戻し、新しいリーダー層を送り込む必要があると訴えた。
「私がすべての答えを持っているわけではない。答えは地域にある」とも語り、地元の創造性と活力をワシントンの政治力に変えると約束した。予備選（各党の候補者を選ぶ選挙）は来年6月の予定で、まず地元民主党の信任を得る戦いに臨む。
舞台はマンハッタン中心部、交代の予感
舞台となる選挙区は、ミッドタウンから両サイドの住宅地までを抱える都市の心臓部だ。長年にわたり影響力を持ってきた現職が9月に不出馬を公表し、バトンを渡す局面を迎えた。行政経験や政策通を自任する顔ぶれが前に出て、地盤や人脈の継承も注目点になる。
民主党の候補者は複数が名乗りを上げ、州議のミカ・ラッシャー氏やアレックス・ボアズ氏らが先行して活動を展開している。非営利組織の若手や法律家も参戦し、争点は生活費、治安、都市インフラ、教育支援へと広がる見通しだ。新人には構想力と実務の橋渡しが問われる。
物価の重圧は家賃から保育料まで生活の細部に及ぶ。そこで提示されるのは、歳出の優先順位や連邦と都市の役割分担だ。挑戦者の言葉が抽象論にとどまらず、交通、住宅、中小事業者支援といった具体策に落ちるかどうかが、街の有権者の手触りに直結する。
ケネディ家の名と“新世代”の手法
同氏は元駐日米大使キャロライン・ケネディ氏の長男で、法学を修め、党大会でも演説の経験がある。家名の重みとともに、短い動画で政治を語る発信が特色だ。最近は進歩派のうねりと歩調を合わせ、ニューヨークの市長選で新顔を支持して存在感を高めた。
ケネディ家の直系が連邦議会を目指すのは初めてとされるが、名前だけで票が積み上がる時代ではない。デジタルの語り口を地元の課題に接続し、政策をどう設計するか。支持の輪を広げるには、鋭い批判と同じ熱量で制度を動かす作法が要る。
時に挑発的な物言いは注目を集める半面、協働の資質を問う材料にもなる。家の物語を携えた新世代が、都市の現実と折り合いをつける工程自体が試金石だ。名が入口で、仕事が出口。その間をどう埋めるかに、この挑戦の価値が宿る。
