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2025年11月14日、図面と仕様書が各メーカーに送られ、社内の調達会議が動き出した。日本航空が地方路線の主力機を一新するため、リージョナルジェット（小型ジェット機）とプロペラ機を合わせて最大70機の導入を検討している。内訳は小型ジェットが中心で、決定は2026年3月期中の見通しだ。機材の絞り込みで運航効率を高め、需要の変化に合わせた座席規模へ移行する狙いがある。
選定が進む小型機、焦点は効率と適合性
関係者の説明では、今回の選定は内通路が1本の小型ジェットを主軸とし、残りを短距離に強いプロペラ機で補う構図になる。単通路ジェットでは欧州のエアバスA220とブラジルのエンブラエルE2が競合し、航続性能や座席数の伸縮性、整備体制の構築容易性などが比較軸だ。プロペラ側は滑走路長や騒音規制への対応、地方空港での運用実績が重視される。発注は確定枠とオプション（仮発注）を組み合わせ、需要の波に合わせて確定化する案が念頭にある。
同社は、機材の種類を絞ることで訓練・整備・予備部品の共通化を進めてきた。高齢化や人口減少で需要の形が変わるなか、100席前後の機材で頻度を保ちつつ座席の過不足を減らす発想だ。統合報告書でも国内リージョナルジェットの後継は「需要動向を見据えて決定」としており、今回の検討はその延長線上にある。コメントは控えられているが、調達チームは静かに条件面の詰めに入っている。
決定は今期中とみられるが、構成は交渉の進展で柔軟に変わりうる。新造機の投入順序、既存機の置き換え速度、系列会社の機材配備など、運用側の都合も反映されるからだ。地方ネットワークの維持には、便数を落とさずコストを抑える術が要る。大型機の減便よりも、小型機で本数を守る方が地域の生活動線を保ちやすい。今回の選択は、その実務的な要請への応答でもある。
ジェットとプロペラ、それぞれの強み
内通路1本のジェットは巡航速度が高く、悪天候時の時間短縮や接続の安定に寄与する。客室の静粛性や天井高も改善が進み、短距離でも「乗る価値」を作りやすい。整備間隔の延長やデジタル監視の導入で稼働率を上げやすい点も魅力だ。一方で燃費の面では路線ごとの適正があり、距離や高度制約が強い区間では、必ずしも万能ではない。
プロペラ機は離着陸性能に優れ、短い滑走路や海風の影響を受けやすい空港で粘り強い。巡航速度は劣るが、短距離では燃費効率が高く、1便あたりの運航費を抑えやすい。客室の改良も進み、騒音や振動は世代を重ねるごとに小さくなっている。地域間の細い流動を丁寧に拾うには、こうした素性が効いてくる。ジェットと組み合わせることで、幹と枝をつなぐネットワークが描きやすくなる。
今回の枠組みでは、幹線の手前にある中距離区間をジェットが受け持ち、超短距離や離島などの特殊条件をプロペラが担う配置が想定される。乗務員資格や整備拠点を最適化すれば、運用の複雑さは許容範囲に収まる。需要の谷に合わせて小型化し、繁忙期は増便で応える。そんな柔らかい運び方が、地域の足には似合う。
調達の作法とリスク管理
確定発注とオプションの組み合わせは、航空業界で広く使われるリスクの分散手法だ。価格と納期を押さえつつ、景気や為替、供給網の揺れに合わせて数量を調整できる。サプライヤーにとっても生産計画の見通しが立ちやすく、双方の思惑が一致しやすい。今回もまず骨格を固め、導入初号機の受領時期や改修仕様を詰めながら、運航データを見て選択肢を広げる段取りになる。
機材の絞り込みは安全にも響く。型式が減れば訓練は深くなり、非常時の手順も共有しやすい。部品在庫は軽く、整備は標準化する。代わりに、1機種に偏りすぎると不具合時の代替が難しくなる。だからこそ、ジェットとプロペラを適度に配し、オプションで“逃げ道”を残す。数字より先に、運ぶべき暮らしのリズムがある。
決定の先には、訓練計画や整備契約、空港設備の微修正といった地道な工程が続く。派手さはないが、ここを丁寧に積むほど、就航初日の静けさは増す。航空の仕事は、準備の質が結果の穏やかさに変わる。
