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北京で2025年11月4日に予定されていた日中共同世論調査の結果公表が、中国側の事情で延期となった。運営する言論NPOは、11月1日夜に中国国際伝播集団から突然の申し入れを受けたと明らかにしている。理由は「公務の都合で担当者が不在」と説明されたという。17日に公表する方向で再調整が進むが、両国の対話を支える民間の枠組みが小さく揺れた瞬間でもあると映る。
何が起きたのか
発表は毎年行われてきた共同調査の一環で、今回は北京での会見が11月4日に組まれていた。現時点で確認されている範囲では、11月1日夜に中国国際伝播集団から言論NPOへ延期の連絡が入り、理由は「公務の都合で担当者が不在」と伝えられた。日本側は単独発表も検討したが、調査の著作権を共同で保有しており、同時の公表が前提であるため断念したとされる。
新たな公表日は11月17日とする方向で再調整中だという。一部報道では、今回が仮に中止となれば2005年の調査開始以来で初めてになるとの見方も出ている。長年積み重ねてきた共同発表の場が足踏みすることで、数字そのものよりも、発表という行為が持つメッセージの重みが改めて浮かぶ展開だといえる。
揺れる背景
この共同調査は、相互の国民感情や地域情勢への見方を問う設問を毎年積み上げてきた。敏感なテーマが含まれる年も少なくなく、台湾や安全保障をめぐる回答は、両社会の空気を映す鏡となってきた。一部報道によれば、台湾問題への反発が影響した可能性が指摘されており、設問や発表の扱いが政治の空気と密接に絡む現実がにじむ。
調査自体は2005年に始まり、民間の継続的な対話を支える基盤となってきた。近年の結果では、中国側の対日印象が大幅に悪化した年もあり、ネット空間の影響など情報環境の変化が指摘されている。数字の上下は一喜一憂の題材になりがちだが、推移を通じて見えるのは、相互理解の接点が拡張したり縮んだりする呼吸そのものだとみられる。
見通しと波紋
今回の延期は、共同での著作権保有という手続き上の条件が、透明性と同時性を担保する一方で、片側の事情が全体の歩調を止める脆さにもつながることを示した。17日に軟着陸できれば、枠組みの弾力性は確認される。他方で再延期や中止となれば、民間の継続性が外的環境にどれほど影響を受けやすいかを示すシグナルになりうる。
政治と世論の接点に立つこの調査は、技巧的な言葉より、共同で公表するという行為に本質が宿る。理由説明が実務の都合にとどまるのか、より広い配慮が働いたのかは断定できない。ただ、結果が語る現実と、発表の可否が示す現実は、どちらも現在の関係を映す。延期の先に、私たちは何を優先し、どこまで事実を共有できるのかが問われている。
