本サイトの記事や画像はAIが公的資料や報道を整理し制作したものです。[続きを表示]ただし誤りや不確定な情報が含まれることがありますので、参考の一助としてご覧いただき、実際の判断は公的資料や他の報道を直接ご確認ください。[私たちの取り組み]
イスラエルのギラッド・コーヘン駐日大使が1日、東京都内での産経新聞のインタビューで、日本との安全保障協力と自由貿易協定(FTA)の推進を新政権に呼び掛けた。10月に発足した高市早苗政権にとって、中東との関係をどう位置づけるかは初期からの重要課題だ。同時に、大使はパレスチナ自治区ガザの復興で「平和教育」への日本の貢献に期待を示した。安全保障と経済、そして紛争地の子どもたちを支える教育支援を、日本はどのようなバランスで担うのか──それがいま静かに問われている。
ガザの子どもたちに届く日本の支援と「平和教育」
大使が言及した「平和教育」は、爆撃で傷ついたガザの街の現実と直結している。学校や病院が被害を受け、子どもたちの多くが心身のトラウマを抱えたまま生活しているからだ。日本政府はこれまでもガザ向け人道支援を継続しており、その一部はUNESCOを通じた教育分野でのメンタルケアなどに充てられてきた。単なる物資供与だけでなく、学びの場をどう再建するかが、支援の焦点になりつつある。
2024年には、日本が拠出した資金を使い、学齢期の子どもたちへの心理社会的支援が始まった。さらに2025年には、UNICEFとパレスチナ保健省、日本政府が連携し、ガザとヨルダン川西岸で母子保健や栄養改善に取り組むプロジェクトも動き出している。医療や水インフラの復旧を支えるJICAの無償資金協力とあわせ、教室の再建、保健サービス、心のケアが一つながりの支援として組み立てられつつある。
こうした公的支援を補うかたちで、日本のNGOもガザで理学療法や心のケア、学習支援を続けてきた。現地で子どもや障害者と向き合ってきた団体は、暴力の連鎖を断ち切るには、生活の安定と同時に「違う背景を持つ人と共に生きる力」を育む教育が欠かせないと指摘する。戦後日本が時間をかけて積み重ねてきた平和教育の経験を、紛争当事国ではない立場からどこまで応用できるのか。その手探りの試みが、すでに始まっている。
安全保障と経済連携、イスラエルが日本に求めるもの
一方でコーヘン大使は、安保分野での連携強化にも強い期待を示した。サイバー攻撃やミサイル防衛、無人機対策などで高い技術を持つイスラエルにとって、装備品の共同研究や情報共有で日本との協力を深めることは、自国の安全と輸出市場の拡大の両面で意味を持つ。日本側も経済安全保障の観点から、サプライチェーン強靱化や新技術で信頼できるパートナーを増やす必要に迫られており、中東の民主主義国との関係強化は選択肢の一つだ。
経済面では、両国はすでにFTAに向けた下地を作ってきた。2022年には日本とイスラエル両政府が、経済連携協定(EPA)の可能性を探る共同研究グループの立ち上げを決定している。その後、大使は在日イスラエル商工会議所などと意見交換を重ね、関西・大阪万博を見据えた投資やスタートアップ連携を呼び掛けてきた。ここ数年でイスラエルに進出する日本企業は増えており、大使の発言は、こうした潮流をさらに加速させたいとの思惑を映している。
ただし、日本外交には別の制約もある。日本政府は二国家解決を支持しつつも、パレスチナを国家としてはまだ承認していない。その一方で、ガザでの民間人被害に懸念を表明し、停戦や人道アクセスの拡大を繰り返し求めてきた。中東産油国との関係や国内世論への配慮もあり、日本はイスラエルとの安保協力を拡大しながらも「紛争当事者に偏らない支援」を維持できるかどうか、難しい綱渡りを迫られている。
中東との距離感をどう取るか、日本の選択肢
高市政権が引き継いだのは、イスラエルとの経済・技術協力を進めつつ、パレスチナには人道と復興の支援を続けるという「二正面」のアプローチだ。コーヘン大使の要請は、そのうちイスラエル側との連携をさらに強めたいというシグナルである。他方、パレスチナ側や国際社会からは、ガザでの攻撃抑制や国家承認を含む政治的な関与を日本に求める声も根強い。どちらにどう比重を置くかは、新政権の中東戦略を象徴する判断になる。
選択肢の一つは、これまでどおり安全保障や経済ではイスラエルとの協力を深めつつ、パレスチナ向けにはインフラ復旧や医療・教育支援を長期的に拡充する道だ。JICAによる緊急復旧支援や、保健サービスを強化するUNICEFとの協力は、その土台になりうる。さらに、日本発のNGOや大学、人材交流を通じて、両社会の若い世代を結ぶ「平和教育」のネットワークを育てることも考えられる。軍事ではなく人への投資で存在感を示すやり方である。
もう一つの道は、安全保障協力に急ブレーキをかける代わりに、人道や国際法の擁護をより前面に出すシナリオだ。ただ、日本のエネルギー安全保障や対米関係を踏まえると、現実には急激な路線変更は難しいだろう。むしろ問われているのは、イスラエルとのFTAや防衛技術協力を進めるなら、その分だけガザ復興や平和教育への関与も強め、誰のどの負担をどの期間支えるのかを明確にすることだ。中東での日本の立ち位置は、こうした具体的な配分の積み重ねで静かに形作られていく。
参考・出典
- 14 March 2024: Japan's emergency assistance to Gaza through UNESCO
- Japan supports health and nutrition services for children and women in the State of Palestine
- Signing of Grant Agreement with Palestine: Providing equipment to promote emergency recovery
- Ambassador Cohen Talks Economic Ties with Israel Japan Chamber of Commerce
