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政府が2026年産の主食用米について、生産量の目安を711万トンとする案を軸に調整していることが2025年10月22日に浮上した。今年の収穫見込み748万トンからの大幅減で、過剰供給と価格下落への不安が広がる産地の声に寄り添う格好となる。政策は増産へ傾いた前政権からの転換点に差しかかると映る。
政府、26年産コメに減産の目安案
稲刈りが進む産地で、農協の集荷所に並ぶフレコンの白が光る。相場表に目をやる生産者からは「今は売値が読みにくい」との言葉がこぼれる。そうした空気の中、政府は26年産の生産量の目安を需要の上限に合わせる方向で調整に入ったとされる。現時点で確認されている範囲では、省庁横断で需給の点検が進む。
目安の水準は711万トン案が有力とされ、今年の収穫見込み748万トン前後からは抑制色が鮮明だ。供給がだぶつけば価格が崩れるとの懸念が、農家の営農計画や資材発注の足かせになっているためだ。販路の組み替えに時間がかかる米では、需給の手綱を早めに示す狙いがにじむ。
一方で、目安を絞れば足元の価格の高止まりを助長しかねないとの見方もある。外食や弁当向けの業務用需要は回復途上にあり、作柄の地域差も避けられない。政府内の最終判断は、各地の収穫進捗と在庫の動きを見極めながら詰められるとみられる。複数の関係者は「年内に方向性を示したい」と語る。
数字でみる需給と在庫の重さ
需給の読み直しの前提に、在庫の積み上がりがある。農林水産省の資料では、2025年5月以降、民間在庫の前年同月差が3カ月連続で増加に転じた。備蓄米の売渡しが影響したとされ、在庫が市場心理に影を落とす局面が続いたことがうかがえる。在庫の回転をどう平準化するかが当面の焦点だ。
26年産の需要見通しは694万〜711万トンのレンジと整理され、生産は最大値に合わせる案が検討されていると一部報道では伝える。需要線に生産を寄せる発想は、価格の急変を防ぎ、産地交付金や在庫政策の負担を軽くする効果が期待されるとみられる。需給の「幅」を明示すること自体に、ガイドの意味がある。
在庫の行方も鍵を握る。26年6月末の民間在庫は過去最大水準に達するとの見立てもあるが、収穫の前倒しや備蓄運用の変更で振れ幅が大きい。数字は動く前提で、地域の作況や作付転換の実態を重ねて読む必要がある局面だといえる。統計と現場の手触りをどう重ねるかが問われる。
政策転換が映す現場の手応え
政策の風向きは、前政権が掲げた増産志向からの修正をにおわせる。主導役の退任後、与党内では生産抑制を求める声が勢いを増したとされ、政府内の調整もそちらに傾く構図が浮かぶ。現場の受け止めは一様ではないが、価格下落への不安が強かった産地にとっては、待たれていたサインでもある。
作付を減らす判断は、農家の資金繰りや雇用にも跳ね返る。収益を補うための高付加価値化、業務・外食向けの銘柄設計、飼料用・加工用への切り替え支援など、きめ細かな手当てが問われる。水田の多面的機能を守る視点も不可欠で、単なる数量調整では現場の不安は癒えない。
消費者にとっては、価格の急騰を避けつつ安定供給をどう確保するかが焦点となる。目安の決定は早ければ年内にも示される可能性があり、産地や実需の対話が最終形を左右する。米どころの秋風の中で、次の一手を急ぐ時間軸が見えてきた。転機の年に向け、静かな駆け引きが続いている。
