本サイトの記事や画像はAIが公的資料や報道を整理し制作したものです。ただし誤りや不確定な情報が含まれることがありますので、参考の一助としてご覧いただき、実際の判断は公的資料や他の報道を直接ご確認ください。[私たちの取り組み]
IRサイトに決算資料が相次いで公開され、4-9月期の数字が10日に出そろった。高炉3社の本業のもうけを示す事業利益(神戸製鋼所は経常利益)はいずれも前年同期を下回った。中国の過剰生産・輸出が価格を押し下げ、米国の通商環境の不透明さも様子見を広げる。国内は建設現場の人手不足が長引き、需要の芽が冷えている。
数字が語る足取りの重さ
10日、主要各社の4-9月期連結決算が出そろい、利益面では横並びの減速感がにじんだ。鋼材需要の弱さに加え、輸出価格の下押しが進み、販売数量と単価の双方に逆風が吹いた格好だ。とりわけ価格先行で動く市況品は採算の悪化が目立ち、在庫の荷動きの鈍さも利益を削った。造船や一部高機能材には底堅さがあるが、全体の落ち込みを補うには至っていない。
神戸製鋼所は経常利益が576億円と前年同期から減少した。在庫評価の悪化によるマイナスが105億円発生し、鉄鉱石など主原料の下落を映した販売単価の低下も重なった。自動車や建設・土木向けの回復が鈍く、素材系の価格転嫁が進んだ分を相殺する形で、半期の収益は上振れきれなかった。収益構造の手当ては進むが、足元の需要の弱さがなお重い。
他の大手も事情は似ている。自動車・建材向けの荷動きは弱含みで、建設工事の遅れが鋼材の引き合いを鈍らせた。原燃料調整に伴う価格の見直しが続く一方、在庫評価(保有在庫の簿価を市況に合わせて見直す会計処理)のマイナスが期中の利益を押し下げる場面が見られた。採算管理を強めても、需要側の改善が遅いと数字は伸びにくい。
中国の過剰生産と国際市場の曇り
業績を覆うのは、アジア指標の弱さだ。中国の過剰生産と輸出増がアジアの鋼材価格を押し下げ、国内の売値にも波紋が広がった。市況が下る局面では、保有在庫の評価損が利益を直撃しやすい。実需が確かでも、先行する指標が軟化していれば、商流は慎重になり、採算確保に時間がかかる。価格交渉の節目ごとに重力が働く構図は、今期も変わっていない。
海外でも不透明感が残る。米国の通商措置をめぐる先行きが見通しづらく、現地の需要家には発注を手控える動きが広がった。輸入規制や追加関税の揺らぎは、売値と数量の予見性を奪い、在庫の持ち方を難しくする。為替が動けば採算の振れ幅も大きくなるため、各社は輸出構成や仕入契約の見直しで緩衝材を厚くしつつ、機能材や高級鋼へのシフトで価格の粘りを確保しようとしている。
国内では建設市場の人手不足が長引き、工期の遅延が続く。棒鋼や厚板などの実需を消し込み、累積在庫の圧力が価格の反発力を弱めている。足元で機械・電力機器向けの明かりも見えるが、裾野の広い建築・土木の停滞が重い。各社は物流や加工の一体運用を強めて、納期の不安を和らげる取り組みを進めるが、需要の底入れにはもう少し時間が要りそうだ。
通期見通しににじむ守りの姿勢
通期の見立ては総じて慎重だ。神戸製鋼所は下期も建設・土木の需要が低調に推移すると見込み、収益の押し上げ要因としては在庫の適正化とコスト抑制、そして機械など非素材の伸長を挙げる。為替や原料の変動に敏感な局面だけに、採算を守る小さな手当てを積み上げ、価格の粘りを確保する戦いが続く。高付加価値材の比率を高める地道な取り組みが鍵になる。
足元で重要なのは、市況の波に対する身のこなしだ。価格交渉の節度、在庫水準の管理、需要地に近い加工拠点の活用といった基本動作を磨き、売上より利益を重んじる配分へ舵を切る。国内の人手不足には、省力化工法やプレファブ製品の提供で応える余地もある。外部環境は選べないが、手元の改善余地はまだ残っている。数字はその歩幅を正直に映す。
ひと息つくには早いが、足音は静かに次の四半期へつながっている。