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省内の会見室に灯りが落ち着くと、上野厚生労働相が一息置いて語り始めた。就任直後の2025年10月21日、総理から現行の労働時間規制の緩和を検討するよう指示を受けたという。働き方改革の5年後見直しが本格化する局面で、政府は「従業者の選択と健康」を軸に次の一手を探る構えである。
「総理からの指示」就任直後の一言が動かすもの
上野氏は2025年10月22日の就任会見で、総理から「心身の健康維持と従業者の選択を前提に、労働時間規制の緩和の検討を行う」よう指示があったと明かした。あわせて「安心して働ける環境を整備する」との大枠も示されたといい、内閣としての方向性がにじむ発言である。
指示は就任の前日、2025年10月21日付とされる。上野氏は「上限規制は過労死認定ラインであることも踏まえて検討する必要がある」と述べ、労働政策審議会での議論を深める姿勢を示した。会見では与党と日本維新の会の連立運営に絡む社会保障改革にも質問が及び、政策全体の整合性が問われる場面が浮かんだ。
記者団からは、過労死遺族らが規制強化を求めている点をどう捉えるかとの問いが飛んだ。上野氏は「そうした声も十分踏まえる」と応じ、現在進む総点検や調査結果を精査したうえで方針を固める考えを示した。結論先行ではなく、現場の実態を起点に議論を積み上げる構図が広がっている。
数字が語る「いまの上限」
現行の時間外労働の上限は原則、月45時間・年360時間である。2019年に施行された働き方改革関連法で導入された枠組みであり、臨時的な特別の事情がなければ超えることはできない。違反すれば罰則の対象となり得るという抑止の仕組みが組み込まれている。
特別条項を付した労使合意がある場合でも、年720時間以内、月100時間未満(休日労働を含む)、複数月平均80時間以内という制約が課される。さらに、原則である月45時間を超えられるのは年6か月までという縛りがある。制度は、「例外は例外にとどめる」思想で支えられてきたと映る。
こうした数値は、過労による健康被害を抑える最低限の安全弁でもある。上野氏が「上限規制は過労死認定ライン」と述べた背景には、100時間や複数月平均80時間という基準が労災認定の目安として運用されてきた現実がある。緩和を語るなら、同時に健康確保策の上積みも不可欠になるとみられる。
期待と不安のあいだで、問われる設計力
人手不足が深刻な中小企業や成長分野からは、繁忙期に柔軟に働けるよう規制見直しを求める声が強い。与党内では「働きたい改革」を掲げる動きもあり、生産性と国際競争力の向上を狙う議論が目立つ。他方で、長時間労働の常態化を助長しかねないとの懸念は消えず、現場の肌感は割れている。
会見の場でも、遺族や労働団体の「強化こそ必要だ」という訴えが示された。規制緩和が健康被害の拡大につながるのではないかという不安は根強い。政府が掲げる「選択と健康」を両立させるには、実労働時間の適正把握、監督体制の強化、テレワークや休み方の設計など、制度面の丁寧な詰めが問われる。
政府はいま、働き方の総点検と実態調査を進めている。論点は上限の数字だけにとどまらず、長時間労働に依存しない生産性向上、企業の情報開示、選択可能な働き方の拡充へ広がるだろう。最終的な結論や工程表は未定だが、労働政策審議会での議論の節目ごとに、社会の視線は一段と厳しくなるとみられる。
