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マイクに向かって各国代表が国名を読み上げる。24日、ウズベキスタンの古都サマルカンドで、ワシントン条約第20回締約国会議が始まった。議題のひとつは、日本の食卓になじみ深いウナギだ。ニホンウナギを含むウナギ属全種を国際取引規制の対象に加える案を巡り、EUやパナマと日本の主張がぶつかる。資源を守るのか、食文化をどう支えるのか、緊張したやりとりが続く。
ウナギ属一括規制案と採決のプロセス
今回の会議には184か国とEUが参加し、絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引をどう管理するかが話し合われる。EUとパナマは、ニホンウナギを含むウナギ属を附属書IIに一括掲載するよう求めている。附属書IIは、今すぐ絶滅危惧とはいえないが、取引を放置すれば将来のリスクが高まる種を載せるリストで、商業取引自体は認めつつ、輸出国に許可証の発給と資源への影響評価を義務づける。ウナギ案は27日の第1委員会で採決され、出席国の3分の2以上が賛成すれば本会議に送られ、12月5日に正式決定される可能性がある。採択されれば、2027年6月から世界のウナギ取引のルールが変わる。
EU側は、ニホンウナギの資源量が大きく減ったことに加え、すでに附属書IIに載るヨーロッパウナギと他のウナギ種の見分けが難しく、税関での取り締まりに抜け穴が生じていると訴える。これに対し日本の水産庁は、国際取引がニホンウナギの絶滅を招く段階ではないとし、まずEU域内での密漁や密輸を徹底的に抑えるべきだと反論する。判別技術も進んでおり、種の識別は可能だという立場だ。さらに、国連食糧農業機関の専門家パネルは、EU案は附属書掲載の科学的基準を満たさないとの見解を示した。一方で条約事務局は採択を勧告しており、科学評価と事務局判断のねじれも議論を一層複雑にしている。
日本の食卓と漁業に及ぶ影響
日本では2024年に約6万トン強のウナギが流通し、そのおよそ7割を輸入に頼っている。国内の養殖業者も、シラスウナギと呼ばれる稚魚の不足分を海外からの仕入れで補ってきた。ウナギ属が附属書IIに掲載されると、輸出国は科学的助言に基づく許可証を発給しなければならず、事務負担や時間が増える。とりわけ稚魚は希少価値が一段と高まり、価格が押し上げられる可能性がある。結果として、うな重やかば焼きの値上がりに直結しかねないうえ、合法的な取引が細ることで、より高値を狙う違法漁獲や密輸が増える懸念も指摘されている。
ヨーロッパウナギはすでに附属書IIに載っており、各国は輸出規制や禁輸措置を通じて乱獲抑制を図ってきた。十分な取締りが伴わず違法取引が続いたという反省もある一方で、国際ルールができたことで資源状況の把握や監視体制が整い始めた側面もある。今回のウナギ属一括掲載を支持する国々は、似た外見の種ごとまとめて管理することで、税関や捜査当局の現場を分かりやすくし、違法取引を追い詰められるとみている。日本国内でも、もし附属書II掲載が避けられないなら、科学的な資源管理とトレーサビリティーの強化で、合法的な取引をどう守るかが焦点になるとの声が出ている。
サマルカンドの会場で交わされる一つ一つの発言が、夏場に香ばしい煙を上げるうなぎ店の景色を、数年後にどう変えていくのかが静かに見つめられている。
