イスラエル治安部隊、「投降」示した男性2人を射殺か　ジェニン急襲作戦に重い疑問

※記事を視覚化したイメージであり、実際の事象とは異なります。

2025.11.28

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11月27日、ヨルダン川西岸ジェニンで行われたイスラエル治安部隊の急襲作戦のさなか、降伏の意思を示していたように見えるパレスチナ人男性2人が撃たれ死亡した。パレスチナTVなどが放送した無音の映像には、男性らが武器を持たないことを示すように上着をめくり、地面に伏せたあと、再び建物の方へ移動させられた直後に至近距離から発砲される様子が映る。占領地で続く軍事作戦の中で、「投降した者の保護」はどこまで守られているのかという重い問いが突きつけられている。

銃声が響く街で起きた「投降後の射殺」

映像が撮影されたのは、度重なる軍事侵攻で知られるジェニンの一角だ。建物のシャッター前には装甲車両と武装した兵士が並び、その間から2人の男性がゆっくりと姿を現す。彼らは指示に従い、両手を上げてシャツを持ち上げ、爆発物や武器を身につけていないことを示したうえで、路上にうつ伏せになったと報じられている。銃声だけが聞こえる日常に慣れつつあるという住民にとっても、その光景は衝撃的だったはずだ。

だが緊張は解けなかった。兵士の一人が男性を足で小突く様子が映った後、2人は再び立ち上がるよう命じられ、シャッターの内側付近に移動させられる。周囲を兵士が取り囲んだ直後、映像には銃撃そのものは映らないものの、別角度の映像や現場近くにいたロイター記者の証言から、短い間をおいて複数の銃声が響き、その後には動かない遺体とそれを隠そうとする兵士の姿が確認されたという。

パレスチナ保健省は、26歳と30代後半の男性2人が死亡したと発表した。ジェニンではこの1年余り、家屋の破壊やインフラの損傷を伴う大規模な掃討作戦が繰り返されており、住民は夜間の急襲を恐れて家族で一室に集まって眠ることも多いとされる。今回の映像は、そうした日常の延長線上にあるはずの「身柄拘束の場面」が、いつでも致命的な暴力へと裏返り得ることを突き付けた。

「テロネットワーク」追及と治安作戦の論理

一方、イスラエル軍と警察は共同声明で、2人はジェニン地域で活動する「テロネットワーク」に所属する指名手配の容疑者であり、作戦中に爆発物を投げ、部隊に発砲したと主張している。声明によれば、男性らは建物から出て投降した後に「容疑者に向けて射撃が行われ」、事案については調査委員会を設けて検証するとしている。ただし、なぜ至近距離からの射撃に至ったのか、映像に映る投降の手順とどのように整合するのかについては、現時点で説明されていない。

背景には、西岸北部で続く大規模な治安作戦の存在がある。イスラエル側は、2023年10月以降のガザ戦争と連動して、武装勢力の拠点とみなすジェニンやトゥルカレムなどで空爆や夜間急襲を増やし、数百人規模の拘束を行ってきたと説明している。この間、西岸各地でイスラエル兵士や入植者に対する攻撃も続いており、政府内では「いかなる潜在的脅威も素早く排除すべきだ」との声が強まっている。

しかし、武装勢力対策という名目が、投降した人々への扱いまで正当化し得るかどうかは別問題だ。イスラエルの人権団体や国際NGOは、過去の発砲事案を検証した結果として、軍内部の調査が兵士の起訴や有罪判決に結びつく例はごく少ないと指摘している。軍事占領下で加害側と捜査側が同じ組織である構図が、現場の隊員に「多少の行き過ぎは処罰されにくい」という認識を与えているのではないか、という懸念も根強い。

投降者保護をめぐる国際法と「不処罰」の連鎖

今回の映像が国際的な波紋を呼ぶのは、単に2人が丸腰に見えたからだけではない。国際人道法では、武器を放棄して降伏の意思を示した戦闘員や、負傷などで戦闘不能となった人々は「戦闘に参加しない者」とみなされ、攻撃の対象としてはならないと定められている。パレスチナ自治政府の広報機関や欧州メディアは、この原則に照らして「現場処刑」「超法規的殺害」にあたる可能性が高いと相次いで報じている。

イスラエル軍は調査開始を表明しているが、パレスチナ側や国際人権団体は、軍内部だけに任せるのではなく、第三者による独立した検証が不可欠だと訴える。ABCニュースなどによれば、イスラエルの人権団体ベツェレムは「パレスチナ人の命が軽んじられている結果だ」として、国際社会が不処罰の構造そのものにメスを入れるべきだとの声明を出したという。過去にも、西岸の検問所やデモ現場で撮影された発砲映像が問題となりながら、最終的に責任が問われなかった事例は少なくない。

ガザ戦争以降、国連や欧州各国は、西岸での民間人死傷や入植者暴力の急増に懸念を示してきた。そのなかで、投降の意思を示したように見える2人が至近距離から撃たれた今回の事案は、「占領下の治安維持」という名のもとで、どこまで暴力が容認されてきたのかを象徴的に問う出来事になっている。誰が、どこまでの力の行使を許されるのか。その線引きを明確にしなければ、ジェニンの路上で倒れた2人の死は、さらなる不信と報復の連鎖の中にのみ埋もれてしまうだろう。

銃声が響く街で起きた「投降後の射殺」

「テロネットワーク」追及と治安作戦の論理

投降者保護をめぐる国際法と「不処罰」の連鎖

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