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秋晴れの空気がやわらかく差し込む昼下がり、2025年10月27日、日本円と連動するステーブルコイン「JPYC」が正式に走り出した。資金移動業者として登録を得たJPYC株式会社が、電子決済手段としての円建てトークンを世に送り出した格好だ。銀行やカード網に依存しない新しい決済インフラの萌芽が、静かに、しかし確かな熱量を帯びて立ち上がっている。
日本円ステーブルコインが動き出した
発行日は2025年10月27日。JPYCは同日に日本円建てステーブルコイン「JPYC」の提供を始め、発行・償還の受付を担う自社プラットフォーム「JPYC EX」も公開した。8月18日に資金決済法に基づく資金移動業者として登録を完了し、準備期間を経ての号砲である。国内で資金移動業者が円建ての電子決済手段を実際に発行するのは初めてと位置づけられ、法制度に裏打ちされた“円のデジタル化”が現実味を帯びた瞬間と映る。
背景には、2023年に施行された改正資金決済法がある。改正で「電子決済手段」の枠組みが整い、信託銀行や資金移動業者が法定通貨に連動するトークンを発行できる道が開けた。JPYCはこの枠組みを使い、日本円と1対1で交換可能、払い戻しも可能なトークンとしての設計を取る。従来の暗号資産とは異なる安定性と可用性を志向し、国内の決済・送金の現場に置き換わりうる選択肢を提示した格好だ。
初期対応のブロックチェーンはEthereum、Avalanche、Polygonの3つとされる。ブロックチェーン上で即時性と低コストを引き出しつつ、日本円での発行・償還を担保する構成だ。発行の土台が整ったことで、実需がどの領域から立ち上がるのか、企業や開発者の反応に視線が集まっている。
仕組みとねらい:ノンカストディで広がる使い道
JPYCが打ち出すのは「ノンカストディ」である。発行体はJPYCそのものだが、発行後の管理はユーザーのウォレットに委ねられる。発行・償還という最小限の機能だけを提供し、移転・決済・顧客接点は第三者が自由に設計できる構図だ。いわば“現金を自分の財布で管理する”感覚をデジタルで再現し、エコシステムの成長に伴ってコストを抑えながら用途を広げる狙いが浮かぶ。
発行・償還の入口は「JPYC EX」に集約され、ユーザーは本人確認を経たうえで、銀行振込による発行や日本円での払い戻しを行う。マネーロンダリング対策を発行・償還の関門で徹底しつつ、オンチェーンの透明性も活かす二段構えである。運用の自由度は高く、法律に反しない限り、決済、送金、資金管理といった使い道をユーザーやサービス事業者が自主的に組み上げられる設計が特徴だ。
この枠組みは、既存の前払式や閉域のポイント網とは対照的である。発行体が全機能を抱え込むのではなく、発行と償還を“共通インフラ”として切り出すことで、外部のウォレットやアプリがつながりやすい。SDKの提供も進み、開発者が数行のコードで組み込める導線を用意したという。オープンな土台に多様なフロントが生まれるかが、普及の鍵になりそうだ。
収益モデルと課題:10兆円の野心と規制の壁
同社は今後3年で発行残高10兆円規模を目標に据え、裏付け資産の運用益を主な収益源とする考えを示す。日本国債と預金を組み合わせ、金利環境に応じて比率を調整しながら安定収益を確保する描き方だ。足元の金利水準を踏まえれば、各種手数料の無料化を続けられると自信をのぞかせるが、金利低下や不正な発行・償還の繰り返しによるコスト増といったリスクも意識しているとみられる。
一方で、規制面の制約は無視できない。現行の登録区分では、1回当たりの発行・償還に上限が設けられるなどの条件があり、大口の貿易決済のようなケースでは使い勝手に制約が残るとの見立てもある。まずは機関投資家やクリプトに馴染みの深い層が先行し、UI・UXの平易化とともに一般層へ広がるという段階論が現実的だろう。第一種への移行や制度整備の進展が、利用の天井を左右する。
健全性の担保も肝になる。不正利用の芽を発行・償還のKYCで摘み、当局の要請に応じた送金停止など、即応の手当てを重ねる構えだ。オンチェーンの記録は追跡可能性を高め、民間コンソーシアムでの情報共有も後押しする。透明性とプライバシー、自由と安全の折り合いをどこに置くか。次世代の決済インフラにふさわしい“運用の作法”が、これから試されていく。
