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押収品の記録に目を走らせる捜査員が、逮捕状の束を机に置いた。警視庁国際犯罪対策課は2025年11月6日までに、無職の高橋宗正容疑者(40)ら7人を詐欺容疑などで逮捕した。関東で相次いだ特殊詐欺で少なくとも500件に関与し、被害は22億円超とみられる。受け子ら計29人の摘発に続き、資金の流れと指示系統の解明が加速している。
電話一本から動き出す分業
逮捕容疑のひとつは2024年11月8日ごろ、埼玉県新座市の80代女性に銀行協会職員を名乗って「口座が不正に使われている」と告げ、キャッシュカード4枚を受け取り現金400万円を奪ったとするものだ。受け渡しの現場には複数の役割が配され、回収後はすぐ移送に回されたという。
グループはSNSで人手を募り、現場でカードを受け取る係をファースト、引き出し役をセカンド、指示や回収を担う層をサード、最上位の高橋容疑者をアンカーと呼んでいた。連絡は秘匿性の高い通信アプリで重ね、名簿や動線は細かく分割されて共有されたとされる。
関与が疑われる事件は広範に及び、被害の口座から現金化までを短時間でつなぐ動線が整備されていた。だましの文言は「逮捕状」「補償」「確認」など不安を煽る語が中心で、対象の年代を問わず刺さる表現が繰り返されたという。この規模の分業は、追跡の手間を増やす狙いもあった。
末端から上層へ、積み上げる捜査
これまでに受け子や出し子、回収役など計29人が摘発され、関係先の押収資料や通信履歴の照合から上層の動きを立体的に描き出してきた。末端は報復を恐れて口が重くなりがちだが、資金移動の痕跡や端末の位置情報を束ねることで、指示の発信源に迫る手法が積み上げられた。
同課は詐取金の一部が暴力団側に渡った疑いを重く見る。司法手続きと並行して、資金の凍結や損害賠償の支援に道を開く取り組みも進む。被害回復の遅れは次の犯行の糧になるため、資金の剥奪を優先する姿勢が強まっている。
特殊詐欺は国内外に拠点を分散し、上位層が姿を隠す構造が常態化している。組織横断のプロジェクトで情報を共有し、国外の捜査機関とも照合する動きは、近年の捜査実務で定着しつつある。今回の逮捕も、そうした連携の延長線上にある。
高止まりする被害と、広がる勧誘
国内の被害は増減を繰り返しながらも高止まりが続く。とくに警察官や公的機関を装い、SNSや通話アプリで偽の手帳画像や逮捕状を示す手口は高額化が目立つ。知らない番号に出ない、国際発信の着信制限をかける、名乗りを聞いたら一度切って確認する、といった基本の徹底が被害を抑える。
一方で、犯行側はSNSで短期の高収入を掲げて実行役を誘う。生活の隙間に入り込む文言が増え、未経験でも可、匿名で始められるなどの言い回しが敷居を下げる。地域の相談窓口や自治体の啓発も広がっており、迷った段階での通報と家族内の共有が抑止に効く。
今回の逮捕で分断されたいくつもの連絡網は、沈黙の時間を迎えている。擦り減ったカードの縁や、使い捨ての端末に残る微かな履歴が、奪われた時間の重さを伝えていた。
