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記者団の前でマイクを握った片山さつき財務相は、円が1ドル=157円台まで売られた21日朝、市場に向けて静かに釘を刺した。過度な変動や無秩序な動きが続けば、政府として必要に応じて適切に対応する、その中には為替介入も「当然、考えられる」と語り、約10か月ぶりの円安水準に神経をとがらせている姿をにじませた。
片山財務相、急速な円安に警戒感
片山財務相は21日、為替市場の動きについて「足元の動きは一方的で、また急激である」と述べた。具体的な水準へのコメントは、市場に不測の影響を与えかねないとして避けつつも、過度な変動や無秩序な値動きには「必要に応じて適切な対応を取る」と強調し、投機的な動きが強まれば行動も辞さない構えを示した。
背景には、巨額の経済対策による財政悪化への懸念などから、円が一時1ドル=157円台後半まで下落し、およそ10か月ぶりの円安水準を付けたことがある。輸入物価やエネルギー価格の上昇を通じて家計や企業コストへの圧力が続くなか、政府による「口先介入」とも言える発言は、市場にスピード調整を促すシグナルとして受け止められている。
日米共同声明が示す介入のルール
片山財務相が拠り所とするのが、2025年9月に公表された日米財務相共同声明だ。声明は「為替レートは市場で決定されるべき」との原則を再確認し、競争上の目的で為替水準を目標にしないと明記したうえで、「過度な変動や無秩序な動きは経済および金融の安定に悪影響を与え得る」と警告している。
同時に、為替介入はそうした過度な変動に対処するために限定されるべきだと位置づけられた。政府・日本銀行が市場で外貨や円を売買し、急激な動きを和らげる仕組みである。2024年春には、円買い・ドル売りの介入額が約9.7兆円と過去最大規模に達し、一時160円台まで進んでいた円安を押し戻した例もある。今回の発言は、このルールの枠内で必要なら再び手段を行使するというメッセージと映る。
家計と企業に広がる円安の負担
円安は輸出企業の収益を押し上げる一方で、輸入物価を通じて生活にじわじわと影響する。燃料や食品、日用品の多くを海外に頼る日本では、為替が短期間で大きく動くほど価格転嫁のスピードも速まりやすい。家計の節約志向が強まれば、内需の回復が鈍り、賃上げの持続力にも影を落としかねないという懸念が残る。
企業側も、急速な円安は採算計画や投資判断を難しくする。為替予約などで一定のヘッジは可能だが、変動幅が大きくなるほど予測は効きにくい。だからこそ、政府が「ファンダメンタルズを反映した安定的な推移」を重視する姿勢を繰り返し示すこと自体が、市場に対する一種の安全弁となる。発言のトーンとタイミングを通じて、当局は行動前から相場の熱を冷まそうとしているようにも見える。
市場参加者は、円相場の水準だけでなく、スピードや背景となる経済情勢を総合的に見ながら、次の一手を探っている。財務相の言葉は短くとも、その背後には家計と企業の負担を抑えたいという思惑と、国際協調の枠組みを外さずに市場と向き合おうとする慎重な計算が重なり、静かな緊張感が続いている。
