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去年7月、埼玉県川口市のマンション一室で起きたガス爆発で、激発物破裂などの罪に問われた中国籍の男の裁判が始まった。さいたま地裁の初公判で男は起訴内容を認め、爆発でけがを負った人たちや壊れた街の暮らしが、あらためて法廷で見つめ直されている。
爆発が奪った「日常」、住民に残る不安
爆発が起きたのは去年7月18日夜、JR西川口駅近くのマンション3階の一室だった。室内でガスが充満した状態で火がつき、窓ガラスや外壁が吹き飛んだ。住人の男のほか通行人ら計8人がやけどなどのけがを負い、周囲の建物19棟と車両66台にも被害が出たと報じられている。
男が住んでいた部屋は黒く焼けこげ、周辺にはガラス片やがれきが散乱した。近くのスーパーや住宅の窓も割れ、一時はガスの供給が止まり入浴できなくなった住民もいた。突然の爆発音と揺れを経験した人の中には、今も大きな物音に驚いてしまうと各紙の取材に語る人もおり、事件は単なる物的被害ではなく生活基盤そのものを揺さぶった。
自殺企図と他人の被害、どこまでが「自己責任」か
警察に対し男は、当初は自殺するつもりでガス管を操作し室内にガスをためたと説明したとされる。その後われに返り窓を開け、たばこに火をつけたところ爆発したという。検察は、爆発で3人にけがを負わせたとして激発物破裂などの罪で起訴し、およそ4か月の鑑定留置を経て刑事責任能力はあると判断した経緯が報じられている。
初公判で男は起訴内容を認めたが、自殺目的だったという供述と周囲への危険の大きさをどう評価するかが今後の審理の焦点となる見通しだ。都市部の集合住宅では、一人の部屋の行為が周辺一帯に被害を広げかねない。自ら命を絶とうとした行為であっても、他人の身体や生活を危険にさらしたとき、どこまで責任を負うのか――この裁判は、社会全体が抱えるその問いに向き合う場にもなっている。
