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都内のイベント会場に、黒いラックの模型と銀色の配管が並んだ。空調の低い唸りの向こうで、KDDIが新しい計算の器を披露した。大阪府堺市の旧シャープ堺工場を転用したAIデータセンターで、GPUクラウド「KDDI GPU Cloud」を2026年1月下旬からトライアル提供し、2026年4月1日に正式な申し込み受付を始めるという。産業のAI基盤を国内でまかなう動きが、現実味を帯びてきた。
巨大工場をAIの心臓へ、短期立ち上げの裏側
KDDIは2025年10月28日、堺の新拠点で最新世代GPUを活用したAIデータセンターを稼働させる方針を公表した。場所は液晶パネルで知られたシャープ堺工場の跡地である。2025年4月に取得した広大な設備を活かし、電力と冷却というデータセンターの根幹を再利用することで、立ち上げの時間を圧縮したとみられる。既存インフラを土台に据えたからこそ、計画のスピード感が際立つ。
現地には大容量の受電と配電の系統が残り、工場時代に敷かれた冷却設備も健在だ。GPUは発熱と消費電力が大きいが、KDDIはTelehouse渋谷で培った水冷の知見を横展開し、冷却面のボトルネックを解いていく構えだ。空気と液体を組み合わせた最適化で、施設全体の効率と信頼性を両立させる設計が浮かぶ。再整備のコストと時間を抑えるうえでも合理的な選択である。
この拠点は単なる設備更新ではない。国内でAIの学習と推論を回し、データを外に出さないという要請に応える場でもある。監視カメラ映像や企業内データの取り扱いに慎重さが求められる中、拠点の国内化はサプライチェーンの透明性と説明責任に直結する。国産の通信インフラと結び、企業の「持ち込みデータ」を守りながら計算力を供給する狙いがにじむ。
GB200 NVL72を核に、クラウドの顔で提供する
サービス名は「KDDI GPU Cloud」。KDDIは2026年1月下旬のデータセンター稼働にあわせてトライアル提供を始め、2026年4月1日から申し込み受付を開始する。中核にはNVIDIAのGB200 NVL72を据え、生成AIの学習や高度な推論、科学計算までを想定する。クラウドの顔で提供することで、必要なときに必要な規模へと段階的に拡張できる柔軟性を持たせる。
ネットワークはキャリアグレードを前提に設計し、広帯域のインターネット接続から閉域接続までを選択できるとする。社内システムや各地のデータレイクと結び、分散するデータを堺に集約して学習を回す運用が現実味を帯びる。オンデマンドでリソースを切り替えられる設計は、モデルの前処理から学習、評価、推論に至る長いサイクルを支える基盤として効いてくる。
KDDIは生成AIモデルとの連携も見据える。堺の計算基盤を活かし、パートナーとの協業で生成AIの利用シーンを広げる方針を示した。オンプレミス型の提供を軸にすれば、モデルの利便性とデータガバナンスの両立が図れる。モデルやワークロードの変化に応じて計算資源を最適化し、コストと性能の釣り合いを取りながら運用を継続する姿が浮かぶ。
国内保管と業務適用、広がる使い道
国内運用の強みは、機密データを国内にとどめたまま高度な学習を回せる点にある。製薬の創薬研究や金融のリスク分析、モビリティの自動運転モデル開発、医療のゲノム解析など、扱うデータが社外に出しづらい領域ほど恩恵は大きい。コンプライアンスの要求に応えつつ、社内データと最新モデルを近接させる構成がとれる意義は小さくない。
スタートアップにとっては、初期投資を大きく構えることなく本格的な学習を試せることが追い風になる。試作から本番への橋渡しを少ない段差で越えられるほど、開発の試行回数は増える。大企業にとっても、閉域での接続や既存システムとの親和性が担保されれば、既存業務の延長線上でAIの適用範囲を広げやすい。堺の拠点は、その両方を射程に入れていると映る。
KDDIは独自の通信網と全国のデータセンター群、モバイルネットワークを一体で運用してきた。今回の拠点は、その連係の上に重ねる形で機能するはずだ。広帯域の取り回し、ガバナンスを意識した運用、そして必要時に計算力を集中させる柔軟性。2025年10月28日の発表は、産業のAI基盤を国内で回すという意思表示であり、2026年に向けて現場の時計の針を速める。
