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ウクライナ南部の前線都市ヘルソンと港湾都市オデーサが、再び電力インフラへの夜間攻撃にさらされた。地元当局や電力大手DTEKによると、オデーサ州では約5万世帯が停電し、ヘルソン市では熱電併給施設の停止で約4万人が暖房を失った。冬の気配が強まる中、住民は暗く冷え込む住まいで次の一撃に備えながら、「この先どう暮らしを守るのか」という問いに直面している。
電気も暖房もない前線の夜、住民の負担
今、問われているのは、こうした攻撃が続く中で住民の暮らしをどう守るかだ。停電や暖房停止は、病院や学校、高層住宅まで日常生活のあらゆる場面に影響しうる。今回もオデーサでは約5万世帯が送電網から切り離され、ヘルソンでは集中暖房に依存する4万人超が寒さと向き合っている。2月の別の攻撃時には、オデーサで病院や幼稚園が被害を受け、市内に市民向けの「暖房テント」が設けられた例もあり、地域社会はそのたびに応急的な避難先や暖を取る場所を探してきた。
ウクライナのエネルギー省によれば、別の前線地域ドネツク州でも約6万人が停電に見舞われている。限られた技術者や予備設備を前線各地に振り分ける必要があり、復旧の速度には地域差が生じやすい。住民の間からは、戦況に左右されない分散型の電源や個別暖房設備を増やしてほしいとの声も出ており、インフラの脆弱さが、日々の生活不安として静かに積み重なっている。
標的となるエネルギー網と、守りを固める時間
ロシア軍は侵攻開始以来、冬の前後にエネルギー施設への集中的な攻撃を繰り返してきた。今回もDTEKが運営するオデーサ州の施設が損傷し、バックアップ回線で約9500世帯の送電は回復したものの、残る5万1800世帯では復旧作業が長期戦になる見通しだ。ヘルソンでは熱電併給所が激しい砲撃を受けて停止し、約470棟、4万0500人超が同じ熱源に依存する構造ゆえに、一度の打撃で暖房を奪われた。電力と熱を集中して供給する仕組みは効率的な一方、戦時には弱点にもなりうることがあらためて浮き彫りになっている。
エネルギー事業者や地方当局は、移動式ボイラーの導入や配電網の再構築など、被害を局所化する対策を急いでいる。ただ、前線に近い都市では設備の分散や強化にも時間と資金が必要で、攻撃が続く限り「直しては壊される」消耗戦になりかねない。市民の生活を守るには、防空能力の強化だけでなく、小規模発電や個別暖房の普及支援といった内側からの備えも重要になっており、誰がどのコストを負担してエネルギーの安全網を広げていくのかが、これからの大きな課題として残されている。
参考・出典
- Russian attacks cut power, heating supply for tens of thousands in southern Ukraine
- Russians attack energy facility in Odesa Oblast, leaving thousands of people with no power
- Kherson Heat and Power plant shuts down after severe damage from Russian shelling
- Power Outage in Odesa Region After Russian Attack with Partial Restoration Underway
- ウクライナで16万人以上が電力暖房失う 氷点下の夜間にインフラ攻撃
