ナイジェリア中部で教会襲撃　牧師含む12人拉致　別地域でも被害続く

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2025.12.01

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ナイジェリア中部コギ州のエジバで11月30日、日曜礼拝のさなかに武装集団が教会を襲い、牧師1人と信者11人が連れ去られた。同じ時期に別の地域でも襲撃が起き、拉致された人は計26人にのぼると伝えられる。学校や教会といった「日常の場」が狙われる誘拐が続くなか、人々は祈りや学びを守るために、何をあきらめなければならないのかが問われている。

礼拝の場が一夜で恐怖の現場に　取り残される地域社会

襲撃を受けたのは、コギ州ヤグバ・ウエスト地方政府区にある新設のキリスト教会だ。早朝の礼拝が続くなか、銃で武装した男たちが突然敷地に入り込み、信者たちは銃声に驚き散り散りに逃げたという。地元メディアは、牧師とその妻、複数の信者が車両で連れ去られたと伝えており、静かな農村の教会が一瞬で恐怖の現場に変わった。

こうした拉致は一件にとどまらない。日本の報道によれば、30日までにナイジェリア各地で発生した一連の襲撃で、少なくとも計26人が武装集団に連れ去られた。同じ11月には北西部ケッビ州の寄宿学校から女子生徒25人が誘拐され、親たちは子どもを学校に戻すかどうかの判断を迫られている。拉致された人々の家族は、身代金の負担だけでなく、仕事や農作業を中断して安否を確かめ続ける日々を送っている。

現場の住民にとって、「集会に出るかどうか」は生死に関わる選択になりつつある。礼拝に行く代わりに自宅で祈る人もいれば、教会の周囲で自警団に参加し、夜通し見回りを続ける若者もいる。別の州では、教会襲撃で複数の信者が殺害され、礼拝のライブ配信中に銃声が響く映像が世界に拡散した。宗教的な緊張だけでなく、貧困や失業を背景にした武装集団の活動が、こうした「身近な空間」の安全をじわじわと奪っている。

学校閉鎖と礼拝自粛要請　「集まること」が揺らぐナイジェリア

コギ州政府は今回の教会襲撃を受け、「犯罪が多発する地域の礼拝所は、治安が改善するまで集会の継続を慎重に検討すべきだ」と呼びかけた。情報相は「何か異変を見た住民は、必ず治安当局に通報してほしい」と強調し、警察や地元の自警組織と連携して救出作戦を進めていると説明する。州の声明を伝えたナイジェリアのニュースサイト「TheCable」や「BusinessDay」は、礼拝を守る責任が信者側にも重くのしかかっている実情を指摘している。

一方、隣接するクワラ州では、教会襲撃と誘拐を受けて、政府が一部地域の学校を一時閉鎖した。クワラ州の教育当局はロイター通信などに対し、「誘拐犯が子どもを人間の盾として利用する恐れがある」とし、安全が確認されるまで授業を再開しない方針を示した。これにより授業の遅れや進学への影響が懸念され、教育の機会と生命の安全のどちらを優先するのかという、厳しい選択が保護者と生徒に突きつけられている。

ナイジェリア各地で続く誘拐は、宗教対立だけでなく、身代金を狙う犯罪ビジネスとしての側面も強いとされる。地方の治安部隊は広大な農村地帯を十分にカバーできず、武装集団は教会や学校といった警備の手薄な場所を標的にしている。最近では、教会から数十人の信者が連れ去られ、1人当たり1億ナイラ規模の身代金が要求されたケースも報じられた。中央政府は非常事態宣言や外交的な働きかけで治安改善を訴えるが、最前線で「集まることの危険」を引き受けているのは、地方の小さな共同体にほかならない。礼拝や学びの場を守るために扉を閉ざすのか、それとも危険を前提に続けるのかという重い選択が、今も人々の暮らしを揺さぶっている。