米政府関与で脱中国依存　韓国の高麗亜鉛、精錬投資74億ドル

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2025.12.16

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韓国の高麗亜鉛は2025年12月15日、米テネシー州で総額74億ドル規模の重要鉱物の精錬拠点を整備する計画を明らかにした。米政府が資金面で深く関与し、中国への依存を薄める狙いが前面に出る。舞台はクラークスビルの既存工場で、いったん解体して大型の新施設に置き換えるという。供給網の話に見えて、実際には「誰がどこで作れるか」という産業の地図を引き直す動きでもある。

工場の建て替えが、現場の雇用と地域の選択肢を変える

計画では、クラークスビルにある亜鉛精製工場を取得したうえで解体し、より大規模な精錬施設を建設する。精錬は「鉱石を金属にする最終工程」で、同じ鉱山を持っていても、工程を握る国が強い。設備投資の話が重く聞こえるのは、地域の雇用やサプライヤーの仕事量が、既存工場の延命ではなく“作り替え”で動くためだ。

建設が進めば周辺の労働需要や関連サービスの需要が増える可能性がある。一方で、操業までの期間は長く、日々の家計がすぐに変わる類いの話ではない。むしろ注目点は、地域が「単一金属の工場」から「複数金属を扱う拠点」へ変わることで、景気の波に対する耐性がどう変化するかだ。

重要鉱物をめぐる焦り、米国が求めたのは“精錬の国内化”

高麗亜鉛の説明では、米政府の要請が計画の出発点になった。重要鉱物は、ひとことで言うと半導体や防衛、電力網などの要所で使われ、供給が途切れると代替が効きにくい材料だ。採掘だけでなく精錬が偏在すると、輸出規制や政治対立がそのまま供給不安に変わる。米国が「国内需要の増加」と「供給網リスク」を並べて語るのは、この弱点を埋めたいからだ。

もし供給が特定国に偏ったまま価格が急騰する局面が続けば、製造業のコストを通じて物価に波及するシナリオは否定できない。逆に、精錬能力が分散すれば、値動きの振れ幅が小さくなる可能性がある。過去に起きた資源の「囲い込み」が再来するのか、それとも複数拠点で薄められるのかが分岐点になる。

2029年開業へ、年54万トンの見取り図は何を意味するか

新施設は2029年の開業を見込み、年間生産は合計54万トンとされる。内訳は亜鉛30万トン、銅3万5000トン、鉛20万トン、レアアース5100トンだ。ここで重要なのは、単一金属ではなく「複数を同じ場所で」扱う設計にある。精錬所は原料調達や排出管理、電力確保が絡むため、一度軌道に乗ると産業の集積が生まれやすい。

一方で、規模が大きいほど原料の確保が鍵になる。Nyrstarのクラークスビル拠点は柔軟な原料対応を特徴としてきたが、新施設でも同様に多様な供給元を維持できるかが問われる。つまり、工場を建てるだけでは“中国依存の軽減”は達成できない。原料調達の契約、物流、規制対応まで含めて、長期の運用設計が勝負になる。

資金とガバナンス、74億ドル計画の足元で起きる綱引き

資金面では、米政府が主に支える枠組みが示されたが、巨額投資は企業側の意思決定の重さも増幅させる。実際、12月16日には大株主側が資金調達の手法を巡って差し止めを求める動きも報じられた。プロジェクトそのものに賛同があっても、「誰が負担し、誰の影響力が強まるのか」で対立が起きやすい。国家戦略級の案件ほど、企業統治の課題が表面化する。

先行きは少なくとも2つに分かれる。1つは、計画が予定どおり走り出し、米国内での精錬能力が段階的に立ち上がる道だ。もう1つは、資金調達や意思決定の混乱で遅れが積み上がり、供給網の再設計が“絵”に戻る道である。精錬所は完成した瞬間に勝負が決まる設備ではない。運用の持久戦に耐える体制を作れるかが、最終的な価値を左右しそうだ。