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扉が閉まる音とともに、党本部の会議室で指示が飛んだ。自民党は14日、情報収集と分析の司令塔機能を強化する「インテリジェンス戦略本部」の初会合を開催した。小林鷹之政調会長は「強化が急務」として、司令塔の整備と対外情報の底上げ、外国からの干渉の防止を柱に検討を始動。日本維新の会との連立合意で国家情報局の創設が明記され、政府側の検討と歩調を合わせる構図が見えてきた。
司令塔づくりが動き出す
14日の会合では、小林氏が「主要国に比べ日本の機能は脆弱との指摘がある」と述べ、立て直しの方向性を示した。論点は大きく3点だ。首相直轄の司令塔機能を鍛えること、対外情報収集を抜本的に強めること、そして外国からの干渉を防ぐ体制を築くこと。出席議員からは、人材の流動が早すぎるとの問題意識も出され、運用に踏み込んだ議論の土台が置かれた。
初回には元国家安全保障局長の北村滋氏が招かれ、外交・情報・国防・経済のバランスを踏まえた制度設計の必要性が共有された。会議室に漂う空気は、抽象論から実装へ切り替える合図のようだった。現行の組織や業務を活かしつつ、何を新設し、何を改めるか。机上の整理だけでは届かない、運用の癖や人事の流れにまで手を入れる覚悟が問われている。
流れは政権の動きとも連動する。政府は10月下旬、情報分野の司令塔となる「国家情報局」の創設に向け検討入りを公表した。連立合意では、来年の通常国会で内閣情報調査室を格上げし新組織を設ける方針が盛り込まれている。党内の設計作業と内閣側の制度検討が同じ方向を向くことで、検討事項の優先順位や法整備の順番が具体化していく見通しだ。
国家情報局とは
合意文書が描く姿は、現行の内閣情報調査室を土台にした“格上げ”だ。インテリジェンス（政策判断の基盤となる情報の収集・分析）を政府横断で束ね、首相を直接支える司令塔の役割を担う。省庁ごとに散らばる情報のパイプを集約し、分析結果を迅速に政策に反映させる仕組みを整えることが狙いである。名称だけでなく、権限や席次、責任の線引きが焦点になる。
内閣情報調査室は、これまでも国内外の情報を収集・分析し、危機管理や外交安全保障を支えてきた。ただ、各省の専門部局や警察・外務・防衛の情報機能が並立する中で、最終的な判断材料を一気通貫で作る体制には改善の余地があるとされる。新組織はその“縦糸”を引く役目を担い、関係機関の知見を束ねる接合点の設計が鍵を握る。
実現には法制度の整備が欠かせない。所掌事務や情報共有のルール、国会・内閣の関与の在り方、人事や予算の扱いまで条文で裏付ける必要がある。あわせて、平時と有事での意思決定フローの切り替え、データやサイバー分野の専門性の確保、自治体や民間との連携の設計も避けて通れない。制度としての“器”と、日々動く現場の“血流”を一致させる工程だ。
監督と人材、実装の壁
一方で、強い司令塔には相応の監督も求められる。情報機能の拡充は安全保障を支えるが、権限が肥大化すれば透明性や人権との緊張が生じる。野党から慎重論が示される場面もあり、制度づくりでは国会関与や第三者的な検証、記録管理のルールなど、信頼を担保する枠組みをどう織り込むかが問われる。強化と抑制を両立させる設計が長く機能する。
人材の確保も要だ。省庁横断で“情報の職”を育てるには、短期のローテーション主体の配置から、専門性を積み上げるキャリア設計へ比重を移す必要がある。会合では既存体制の見直しを求める声が上がった。採用・研修・配置・評価を通じて専門人材を太くすることが、組織の実力に直結する。国内外のネットワークを運用できる実務家の育成が急がれる。
来年の通常国会で制度の骨格が示されれば、次は現場に落とす工程が始まる。法の文言、機関の席次、情報共有の技術仕様、監督の枠組み、そして人の配置。政治と行政の歯車が噛み合うほど、日々の判断は静かに速くなる。初会合の一歩は小さいが、長い制度設計の道のりに向けて、実務の匂いを帯びた議論が始まった。
