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ミシガン湖畔の港町に、巨大な施設計画の輪郭が浮かんだ。ウィスコンシン州ポートワシントンにAI開発向けデータセンター「Lighthouse」を建てる構想である。運営主体のバンテージ・データセンターズは完成時期を2028年とし、4棟構成・合計約902メガワットのIT負荷を掲げる。AIインフラ競争の舞台が中西部へ広がっている。
灯台の名を冠した新キャンパス
新拠点の名は「Lighthouse」。街の象徴でもあるポートワシントン灯台にちなむ。計画地は広大な672エーカーで、単層のデータセンター棟を4棟並べ、総床面積は約250万平方フィートに達するという。湖風の抜ける丘陵地に、AI時代の産業基盤が静かに姿を現しつつあると映る。
完成は2028年とされ、総IT負荷は約902メガワットに及ぶ。次世代GPUを想定した高密度設計が前提で、建物内の三つのミートミールームや多重の引込経路など、接続面の冗長性も重ねる。計画は単なる拡張ではなく、AI特化の要件を最初から織り込んだ設計思想がにじむ。
敷地はミルウォーキーから車で約30分の距離にあり、幹線ファイバー事業者が近傍を通る。複数の相互接続経路を確保し、搬入・運用の動線も分離する方針だ。アクセス性と払底しがちな送電・通信のキャパシティを同時に満たす器が求められる中、地の利と規模感が際立っている。
電力と水の設計、地域が主語になる
電力は地元のWe Energiesが供給し、七割を無排出電源から賄う計画だ。残る分は再生可能エネルギーの購入で毎年100%相当までマッチし、敷地内には変電設備も置く。需要が膨らむAI向け負荷に対し、系統側の冗長化とオンサイト設備の組合せで安定供給を描く設計といえる。
冷却は空冷と液冷を組み合わせた閉回路チラー方式で、水使用効率はゼロに近い水準を目指す。湿地の保全や地域の水源回復への投資も掲げ、水消費を相殺して「ウォーターポジティブ」を実現する構えだ。AIの計算力を押し上げながら、地域の資源循環との折り合いを付けにいく姿勢が浮かぶ。
敷地周囲には原生種の樹木を二千本以上植え、八フィートの植栽土手で騒音も抑えるという。LEED認証の取得を視野に、照明や造園の細部まで省資源を徹底する。強化された外周警備や生体認証を含む立入管理など、セキュリティ面も層を重ねる構成で、地域の安心と事業継続性を両立させる狙いだ。
米国内で加速するAIインフラ競争
AIの高度化で、国内に演算能力を備えることは安全保障から産業競争力まで重みを増している。政権はデータセンター整備やAI開発の加速を優先課題に掲げる場面が続き、電力やサプライチェーンの制約とどう折り合うかが各地で問われている。中西部への大型投資は、その地図を書き換える一手となりうる。
データセンター事業者の動きも速い。バンテージは北米の複数州でAI対応キャンパスを拡張しており、テキサスでも大規模計画を打ち出している。需要の源泉はクラウドと生成AIの双発で、電力・冷却・接続の三点を一体で増強する提案が増えた。Lighthouseはその最新の具体例と映る。
一方で、人材や建設資材、送電網の整備など課題も少なくない。完成までの道のりは長いが、公開された計画からは地域との協調を軸にした設計哲学が読み取れる。22日前後に伝えられた三社連携の報には注目が集まるが、現時点で確認されている範囲では、Lighthouseの仕様と工程が先に具体像を示したといえる。
