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秋の光に包まれた芝生に音楽と笑い声が重なった直後、歓声は悲鳴に変わった。米ペンシルベニア州の歴史的黒人大学、リンカーン大学のホームカミング会場近くで銃撃が発生し、少なくとも1人が死亡、6人が負傷した。発生は2025年10月26日 10:30ごろで、捜査は地元検察や州・連邦当局に広がっている。祝祭の時間が一瞬で断ち切られ、学内外に重い衝撃が走った出来事である。
現場で何が起きたのか
銃声が響いたのは、国際文化センター（ICC）外の駐車場周辺で、テントやテーブルが並ぶ尾上げ（テールゲート）の空間だった。ホームカミングの余韻が残るなかでの突発的な暴力であり、走り出す人波と混乱が一帯に広がったと伝えられる。祝宴の場が一瞬で避難の動線へと変わった光景が浮かぶ。
現時点で確認されている範囲では、銃撃で7人が撃たれ、うち1人が死亡、6人が負傷した。負傷者は20〜25歳とされ、大学の在学生と卒業生に加え、大学と直接の関係がない人も含まれるとみられる。いずれも命は取りとどめる見込みと伝わっており、容体の詳細は段階的に確認が進んでいる。
死亡したのはデラウェア州ウィルミントン出身のジュジュアン・ジェファーズ（25）で、頭部を撃たれて搬送先で死亡が確認されたという。名前が公表されたことで事件は個の痛みを帯び、ホームカミングという共同体の記憶に深い傷を残したと映る。追悼の声は静かに広がっている。
当局の見立てと捜査のいま
チェスター郡の地方検事は2025年10月26日 午後の記者会見で、複数の発砲者が関与した可能性に言及した。一方で、無差別の大量殺傷を意図した計画的攻撃ではなかったとの見方も示した。現場の状況が錯綜するなか、当局は証言と映像の収集を急ぎ、全体像の特定を進めている。
現場では銃を所持していた1人が拘束され、無許可の隠匿携行容疑で身柄が確保された。押収された銃器が事件そのものに使われたかどうかはなお捜査中である。州警察や連邦捜査局も加わり、来場者が撮影した動画や写真の提供を呼びかけるなど、捜査の輪は広域に広がっている。
発砲に至る経緯や、当事者らの関係性は明らかになっていない。検察は「なぜ、誰が、どこで撃ったのか」という基本的な問いの解明に注力しており、弾道や監視映像の解析、証言の突合を通じて時間軸を立て直す構えだ。現段階の見立ては暫定的であり、今後の発表で修正される可能性もある。
大学と地域が抱える痛み
大学は事件を受け、「この国で繰り返される銃暴力に心を痛めている」との声明を出し、学生・教職員への支援体制を速やかに整えた。2025年10月28日は授業を休止し、学内で癒やしと連帯の場を設けるとした。カウンセリングの窓口や支援グループの案内も示され、回復へ向けた具体的な手当が動き出している。
リンカーン大学は、米国で初めて学位を授与したHBCUとして知られる。ホームカミングは、卒業生が母校に戻り、在学生と肩を並べて伝統を祝う年に一度の節目だ。テールゲートのざわめきや交流の輪が一転して悲劇の舞台となった事実は、コミュニティの誇りと記憶を深く揺さぶる出来事である。
州知事は支援を表明し、関係当局は地域に情報提供を求めている。事件の全容解明と責任追及が急がれる一方で、再発防止へ大学と地域がどう連携していくのかが問われる。祝祭の空気を取り戻すには時間がかかるが、共同体の力が試されているといえよう。
