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ワシントンの連邦地裁の法廷で、5年続いた攻防に区切りがついた。ソーシャルネットワーク大手Metaが、米連邦取引委員会(FTC)から提起されていた独占禁止法訴訟で勝訴し、InstagramとWhatsAppを手放さずに済む道筋が示されたのである。2025年11月18日(米国時間)、裁判所はMetaがいま現在「個人向けソーシャルネットワーキング」市場を違法に支配しているとは認められないと判断し、テック業界を揺らした大規模訴訟はひとまずMeta側の勝利で幕を閉じた。
Meta勝訴、問われたのは「いま」の独占かどうか
判決を下したのは、米コロンビア特別区連邦地裁のJames Boasberg判事である。FTCは、Metaが友人や家族とのつながりを軸にした「個人向けソーシャルネットワーキング」市場で支配的地位を維持していると主張し、2012年に買収したInstagramと2014年のWhatsAppを分離させるよう求めてきた。これに対し判事は、過去に独占的な力があったかどうかではなく、「現在もその力を保持しているのか」を示さなければならないと指摘し、FTC側の立証はそこに届いていないと結論づけた。
この訴訟は2020年に提起され、Boasberg判事は2021年と2022年に、証拠が不十分だとして訴えを一度退けている。その後、FTCはMetaの利用者数データや買収の経緯を詳しく盛り込んだ修正訴状を提出し、2022年にようやく本格審理へと進んだ。2025年4月に始まった公判では、Mark Zuckerberg最高経営責任者(CEO)を含む現職・元幹部が相次いで証言し、FTC側は「競争よりも買収で対抗すべきだ」とする過去の発言や内部メールを示して、買収が競争をそいだと訴えたが、裁判所は最終的に「違法な独占を示すには足りない」と判断した。
変わるSNS市場と規制のずれ、残された課題
今回の判断で、MetaはInstagramとWhatsAppを切り離す必要がなくなり、利用者の日常の使い勝手が直ちに変わることはなさそうだ。Metaは判決を歓迎し、自社サービスは人々と企業に利益をもたらし、米国のイノベーションと経済成長を体現していると強調した。一方でFTCは、広報担当のJoe Simonson氏が「深く失望している」とコメントし、控訴を含むあらゆる選択肢を検討すると表明している。結果として、法廷での第一幕は終わっても、規制当局と巨大テック企業の綱引きそのものが終わったわけではない。
判決文でBoasberg判事は、TikTokやYouTubeといった新興・既存の動画サービスが急速に伸び、かつて分けて考えられていた「ソーシャルネットワーク」と「ソーシャルメディア」の壁が崩れつつあると指摘した。独占禁止法は、本来は価格のつり上げや品質低下といった不利益から消費者を守るための仕組みだが、無料で使えるSNSでは「広告がどこまで増えれば不利益なのか」を数量で測ること自体が難しい。今回の敗訴は、当局が従来の物差しのままでは、変化の速いデジタル市場で独占を立証しにくいという現実を浮かび上がらせたとも言える。
ひとつの大きな裁判が終わっても、SNSの画面は刻々と変わり続ける。法と市場のあいだの距離が、少しずつでも埋められていくのかどうかを、利用者は静かに見守ることになりそうだ。