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2025年12月15日、英国の対外情報機関MI6を率いるブレイズ・メトレウェリ長官が、就任後初めて公開の演説に臨んだ。10月にリチャード・ムーア前長官から職務を引き継いだ彼女は女性初のトップだ。テロ、サイバー、偽情報といった別々に見える脅威が連動し、ひとつの火種が複数の分野へ波及する時代だと警戒感を示した。
「平時」と「戦時」の間にある社会の不安
メトレウェリ氏は、英国は「平和と戦争の間」に置かれているという認識を示した。英ITVは、MI6本部の内部にテレビカメラが入ったのは初めてで、映画の舞台を思わせる部屋から言葉を発したと伝えた（ITV）。演説の狙いは、危機が目に見える戦闘だけでは測れない現実を、社会側にも共有する点にある。
この「間」とは、武力衝突の手前で、サイバー攻撃や破壊工作、情報操作が断続的に積み重なる状態を指す。生活への直接影響は限定的でも、公共サービスの障害や偽情報の拡散が起きれば、手続きの手間と不安が同時に増える。普段から情報源を複数で確かめる習慣は、個人が持てる小さな防波堤になる。
女性初の「C」が示す、諜報の優先順位
政府の発表では、メトレウェリ氏は1999年に情報機関に加わり、就任前は技術と革新を担う「Q」を務めた。MI6は海外で情報を集める組織で、国内を担うMI5、通信傍受などを担うGCHQと役割分担する。新長官は、コードを書く力やデータ分析を現場の作法に組み込み、人的情報だけに頼らない体制へ寄せる考えをにじませた。
演説ではロシアを「攻撃的で拡張主義的」と位置づけ、ウクライナ支援を続ける考えも述べたとロイター通信は報じた（ロイター通信）。今後の争点は、秘密を抱えたまま速度を優先するのか、透明性と監視を厚くして社会の納得を得るのかという線引きだ。間接影響として、対立が長期化し制裁や防衛投資が膨らめば、物価や企業コストを通じて家計に効く可能性も残る。
